【都市対抗野球】ミスター社会人・西郷泰之、最多本塁打記録への挑戦

  • 中里浩章●文 text by Nakasato Hiroaki
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

さいごう・やすゆき/1972年8月30日、東京都生まれ。日本学園高校から三菱自動車川崎(のちの三菱ふそう川崎)に入社。96年のアトランタ五輪で日本代表に選ばれ、銀メダルを獲得。その後も社会人野球屈指の強打者として活躍。08年にチームは休部するが、翌年からHondaに移籍し、同年夏の都市対抗で自身6度目の優勝を果たす。また、これまで都市対抗で最多タイの14本塁打を放っており、今大会で新記録の期待がかかる。185センチ88キロ。左投左打、ポジションはファースト。さいごう・やすゆき/1972年8月30日、東京都生まれ。日本学園高校から三菱自動車川崎(のちの三菱ふそう川崎)に入社。96年のアトランタ五輪で日本代表に選ばれ、銀メダルを獲得。その後も社会人野球屈指の強打者として活躍。08年にチームは休部するが、翌年からHondaに移籍し、同年夏の都市対抗で自身6度目の優勝を果たす。また、これまで都市対抗で最多タイの14本塁打を放っており、今大会で新記録の期待がかかる。185センチ88キロ。左投左打、ポジションはファースト。 

 長嶋茂雄氏などに代表される"ミスター"という呼称は、その道の看板を背負う存在につけられるものだ。その語源は"マスター(主人)"で、名人や達人という意味も含まれるのだという。

 昨夏の東京ドーム。社会人野球ナンバーワン決定戦の都市対抗野球大会において、通算14本塁打という大会タイ記録が生まれた。達成したのはHondaの西郷泰之。多くのプロ野球選手が一目置く"ミスター社会人"である。そして7月12日から開幕する第84回大会で、今年41歳になる大ベテランは新たな金字塔に挑戦する。

 新記録樹立への想いを聞くためにグラウンドを訪れると、西郷は苦笑しながらこう言った。

「厳密に言うと、自分はホームランバッターではないんですよ」

 西郷の感覚では、ボールがバットにコンッと当たった瞬間に高く上がり、打ち損じでもキレイな放物線を描いていくのが真のホームランバッター。自身の場合、いいポイントでとらえ、なおかつバットのヘッドを利(き)かせてボールを運んでいく動作がなければスタンドインしないという。もっとも、そういう打撃をできたからこそ、金属から木製バットに変わった2002年以降も本塁打を量産できた。西郷が都市対抗で放った14本塁打のうち9本が木製バットで放ったものだ。ただ、西郷はホームランバッターを目指しているわけではない。

「たとえば走者を進めたいときは右方向へ引っ張れる球を待ち、走者三塁なら外野フライを打ちやすい球を待つ。長打がほしい場面ではそれを打てる球。状況によってバッティングを変えています。チームの力になりたいという想いが一番。チームが勝てばそれでいい」

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