東海大が箱根連覇を逃した理由。想定外の往路タイム差と爆発力不足に泣く (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 遊行寺の坂(15.6キロ地点)が勝負と考えて、余力を残して入っていったが、最初の茅ヶ崎ポイント(6.7キロ地点)で青学大とのタイム差は、2分1秒から2分10秒に広がった。

 両角監督や沿道のファンからも「離されているぞ」と声がかかった。小松はその声を聞き、「マズいと思って、焦りが出て、冷静さを欠いてしまった」という。

 その後、ペースを上げて懸命に前を追ったが、昨年はスイスイと上がれた遊行寺の坂も今年はきつく感じた。それでも「青学の3年生には負けられない」と、2年連続区間賞の走りを見せた。

 ただ、タイムは1秒しか詰められなかった。小松はすばらしい走りを見せたが、青学大の岩見もそれに匹敵する好走だった。8区は両角監督が最も期待し、タイム差を縮める最大のチャンス区間だと想定していたが、岩見が好走したことでその芽は摘まれた。昨年は8区で逆転劇を演じた東海大だったが、今回はその8区で青学大に強さを見せつけられた。

 9区では松尾淳之介(4年)が懸命に追ったが、青学大・神林勇太(3年)が区間賞の走りを見せ、3分42秒と大差をつけられた。ここで勝敗は決した。

 分厚い選手層を誇り、優勝候補筆頭だった東海大はなぜ連覇を逸したのか。

 振り返っても、東海大は全区間を通して走りが悪かったわけではない。大きなミスも大崩れもなかったが、もったいなかったのは往路終了時のタイム差だ。青学大相手に3分22秒差は、やはり相当なハンデになった。レース後、両角監督は「決定的な差を往路でつけられたのが敗因。復路で悪あがきできたけど、それでも追いつけなかった」と語った。

 とはいえ、選手はそれぞれの仕事をまっとうした。たとえば、3区の西川雄一朗(4年)は「もっと攻めていれば......」とレース後に悔し涙を見せたが、昨年と同じ3区を走ったタイムよりも41秒も縮めている。

 高校駅伝、ニューイヤー駅伝と、軒並み記録ラッシュが続いた流れで、今回の箱根駅伝も各区間のタイムが上がることは予想されていた。だが、戦前の予想をはるかに超える区間新ラッシュとなり、東海大でその流れに乗れたのは館澤だけだった。

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