【自転車】片山右京「世代間ギャップ。若手を育てる難しさ」 (3ページ目)
TeamUKYOは6月17日から始まる「ツアー・オブ・イラン」に参戦する。そのメンバーには、土井やホセ・ビセンテとともに、大学生選手の山本隼(やまもと・しゅん)と、湊諒(みなと・りょう)が選ばれた。ともに将来を嘱望される若手有望株だ。この遠征で、彼らは土井やホセの背中を見ながら、さらに多くのものを吸収するだろう。
一方、イランと重複するスケジュールで、6月22日には広島でJプロツアー第9戦が開催される。こちらには、ランキング首位のリカルド・ガルシアや、キャプテンの狩野とともに、今春大学を卒業したばかりの住吉宏太(すみよし・こうた)がその布陣に並ぶ。名門・日大自転車競技部で主将を務めた住吉にも、今後の活躍に期待がかかっている。
「学生時代は、たまたま少し才能があったから結果が出た。でも、これからはそういうことが通用しない世界だから、しっかりとトレーニングして結果につなげていく。それが自信になれば、彼らもさらに強くなっていくと思います」
そう話す土井自身は、現在30歳。現役続行について、ある程度の目処(めど)はつけている、とも言う。
「次のリオデジャネイロ・オリンピックまでは走りたい。……それくらいで、もういいのかな。グランツールやクラシックレースを走ってきた自分の経験や技術、知識を、今後も下の世代に伝えながらやっていきますが、それだけをモチベーションに、この辛いトレーニングをあと10年耐えられるのかというと、厳しいと思う。もう一度ヨーロッパに戻って、世界選手権で勝ってマイヨ・アルカンシエル(世界チャンピオンジャージ)を着ている自分の姿は、正直なところ、全然想像できないんです。だから、本当に嫌になったらすぐにでもやめたいんだけど、まだ嫌じゃない(笑)。むしろ楽しい。この気持ちがなくなったときに、選手として辞めちゃうんでしょうね」
そして、こんなひと言をつけ加えた。
「でもね、自転車が嫌いになることは、絶対にないと思うんですよ。だって、カッコいいから」
そう。自転車はカッコいい。そして、その自転車で誰よりも速く駆けるロードレース選手は、最高にカッコいいアスリートなのだ。
著者プロフィール
片山右京 (かたやま・うきょう)
1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。
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