【GⅠ競輪祭女子王座戦】佐藤水菜が波乱のレースを制し年間グランドスラム達成 落車した仲間を思い「めちゃ悔しい」と涙ぐむ (3ページ目)
【ファンへの思い】
レース後は、優勝した佐藤をはじめ梅川、3着の那須萌美(宮崎・114期)も沈痛な面持ち。梅川は「転んだ選手がいるので、内容のない2着だった」と力なく話し、那須は「落車があって、自分もこけると思った。気づいたらゴールをしていた」とうつむいた。
優勝者インタビューで「悔しい」と発した佐藤は、その後の記者会見でも、「理想的なゴールにはならなかった。戦いきりたかった」と語った。
そこには全選手が万全な状態で戦い、そのうえで勝利を手にしたかったというアスリートとしての誇りと、全員が最後まで走りきるレースをファンに見せたかったという思いがあったのだろう。
レース後、バックヤードでは肩を落としてうつろに歩く仲澤の姿があった。しばらくして彼女を心配した先輩選手たちが、「仲澤はどこ?」と探し回る光景もあった。そこには仲間を思う絆が感じられた。
その他の競技でも、レースや試合でのアクシデントで、勝利者が負傷者をねぎらうシーンはよく見られるが、競輪ではより顕著に表れる。「人のつながり、仲間意識が強い」と語る選手も多く、対戦相手であると同時に、競輪界をともに盛り上げていく同志という思いもある。
とくにガールズケイリンは2012年にスタートし、2023年からGⅠ開催が始まるなど、まだ発展途上にいる。昨年のガールズグランプリ女王・石井寛子(東京・104期)が過去「競輪を広めたい」と話し積極的にメディア出演をするなど、より多くの人にこの競技を知ってほしいと考えている選手が多く、度々ファンへの感謝を口にする。
実際に佐藤はこの日のインタビューで、「心がくじけそうになったんですけど、本当にみなさんが応援してくださったおかげで、がんばってここまで来られたので、ありがとうございました」と語り、「心が弱くて『ありがとう』と言うと泣きそうになるので、あまり言いたくないんですけど......」と言って涙で言葉が詰まるなど、ファンへの感謝の気持ちは強い。
誇りと絆、そしてファンのために。改めてそれを感じさせるGⅠ決勝だった。
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