投資教育を受けている高校の野球部生徒が「リスク」と「リターン」を学ぶ 「月利3%は詐欺です」 (2ページ目)
【一般とは異なる「リスク」の意味合い】
奥野「たぶん、鈴木君や由紀さんでも理解しやすいと思うので、『リターン』とは何かということから話そうか。
資産運用の世界でリターンといえば、損益率のことを意味する。たとえば1万円を投資して、1年後に1万1000円になったとしたら、この投資のリターンはプラス10%になるんだけど、ここで言うリターンは、プラスだけでなく、マイナスになることもある点には注意しておいてね。株価を見ればわかると思うけど、常に値段が上下しているから、買った時に比べて株価が下がってしまうこともある。1万円が1年後に9000円になったら、この間のリターンはマイナス10%になる。
何となくリターンと言うと、プラスで戻ってくるイメージが強いと思うんだけど、投資の世界ではたとえマイナスであったとしても、リターンとして考えられるんだ。
これがリターンに関する説明のすべてです。どう、わかりやすいでしょう。
では、もう一方の『リスク』は何か、ということなんだけど、これは少しややこしい。さっき、鈴木君が『リスクは危険性のこと』と言ってたんだけど、じゃあ鈴木君が言う危険性って『何の危険性なの?』ってことになるよね」
鈴木「え? リスクってお金が減っちゃうことですよね」
由紀「それ以外にもリスクがあるってことですか」
奥野「鈴木君や由紀さんにとって資産運用のリスクとは、鈴木君が今、言ったように1万円で投資したものが9000円になってしまうことをイメージしていると思うんだ。よく『元本割れリスク』、『損失リスク』なんて言葉が用いられているから、それを聞いて、リスクはお金が減ることだと思い込まされているのかもしれないけど、資産運用の世界で使われているリスクの意味は、それとはちょっと違う。
じゃあ何かというと、それは『不確実さ』のことなんだ。
たとえばこの1年間のリターンは10%だったとしようか。で、次の1年間のリターンも確実に10%であることがわかっていて、実際にその通りのリターンが実現するならば、この投資対象のリスクはゼロということになる。
でも、資産運用って、基本、常に価格が動いているものに投資しているから、次の1年のリターンが確実に10%になるとは限らない。15%かもしれないし、5%かもしれない。そして、実際にどの程度のリターンになるのかは、誰にもわからない『不確実』なものなんだ。この不確実さこそが、資産運用におけるリスクなんだよ。
鈴木君が『リスクってお金が減ること』と言ったけど、毎年10%ずつ資産価値が減価していく投資対象があったとして、実際に毎年10%ずつ資産価値が目減りしたとすると、この投資対象は値下がりしているけれども、ノーリスクであるという解釈が成り立つ。
あと、由紀さんの疑問に答えると、資産運用には、他にもいくつかの不確実性があるんだよ。今、説明したのは値動きの不確実性で、一般的には「価格変動リスク」と言われている。それ以外には、換金に関する不確実性である『流動性リスク』と、投資対象が破綻してしまう『信用リスク』があって、この3つが株による資産運用のリスクってことになるかな」
由紀「流動性リスクと信用リスクについても教えて下さい」
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