ファン・ハールとベンゲル。高齢化した「改革派」監督たちの悲哀

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper   森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】名将の新旧交代(前編)

マンチェスター・ユナイテッドの監督を解任されたルイス・ファン・ハール(photo by AFLO )マンチェスター・ユナイテッドの監督を解任されたルイス・ファン・ハール(photo by AFLO ) ルイス・ファン・ハールとアーセン・ベンゲルは、かつて偉大な「革新派」のフットボール監督だった。今はどちらも60代だが、その能力は衰えていない。だが、マンチェスター・ユナイテッドの監督を解任されたファン・ハールも、アーセナルでの続投が決まったベンゲルも、さえないシーズンが長く続いていたことは確かだ。

 ふたりとも「改革者の高齢化」というジレンマに陥っていたのだ。このジレンマが存在するのは、フットボール界だけではない。

 革新的なフットボール監督が歩むキャリアは、だいたい決まっている。監督になる前に、彼らはフットボールを勉強し、前の世代の最も革新的な監督たちのアイデアを盗む。

 ファン・ハールは1960年代に10代だったとき、地元アムステルダム東部にあったアヤックスのスタジアムに出入りし、偉大な監督リヌス・ミヘルスが指揮するトレーニングを見ていた。30年後、ファン・ハールがバルセロナの監督になると、彼の若い通訳ジョゼ・モウリーニョやキャプテンのジョゼップ・グアルディオラがファン・ハールを見るようになった。

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