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松田丈志の目。瀬戸大也、松元克央の
メダルに見る自己記録更新の大切さ (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 自由形の難しさは、競泳種目の中でいちばん速い種目であり、世界中のスピード、パワー自慢が集まる競争が激しい点にある。それはエントリー数を見ても明らかだ。

 人数が多い分、予選、準決勝、決勝と勝ち進むうえで、必要となるタイムもレベルが高くなる。自由形とバタフライの両方をやっていた私の感覚でいうと、バタフライは予選で余力を持って泳げるが、自由形はいつも予選から全力、という感じだった。つまり予選から速いタイムで泳げる、スピードとタフさの両方求められるのだ。

 私ももともと自由形が専門の選手だった。初出場のアテネ五輪で自由形とバタフライの両方に出場し、400m自由形では決勝に残ったが、世界の自由形のレベルの高さを実感した。同時に、五輪でメダルが獲れない悔しさも味わい、それ以降、よりメダルに近い200mバタフライに重きをおくようになった。

 200mバタフライでは世界選手権でも五輪でもメダルを獲ったが、自分が子どものころから大好きだった自由形で、五輪や世界選手権でメダルを獲りたいという夢はいつまでも心の片隅にあった。

 リオデジャネイロ五輪ではバタフライでの出場を逃した分、4×200mフリーリレーでメダルを獲ることに全力をかけた。最後のオリンピックで、自分の原点である自由形で、信頼できる後輩たちとメダルに挑戦できたことは幸せだった。

 リオでメダルを獲れたことで、自由形の重たくて分厚い扉を一つ開けることができたとは思っている。それから3年、まさかこんなに早く自由形短距離の個人種目でメダルを獲る選手が現れるとは、思ってもいなかった。来年の東京五輪、松元がこの種目でメダルを獲得すれば、自由形個人種目では60年ぶりの快挙となる。

 今大会、松元はまだ4×200mリレーも残っている。この種目でもチームメイトと共に奮闘してほしいし、今後200m自由形、さらに4×100mリレーも含めて、日本の自由形を牽引していってほしい。日本の自由形が今後どこまで強くなれるのか、非常に楽しみだ。

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