挑戦者としての再スタート。
坂井聖人が描く「東京で金」の復活プラン (4ページ目)
練習後は、愛犬と遊んだり、大好きな服の買い物に出かけたりする。好きなブランドの限定品などに目がなく、買い集めた服はクローゼットの中に眠っている。それを眺めているだけでも気持ちいいと、笑顔を見せる。すでに秋冬モノのアウターも予約済みだという。
「プライベートと練習とのメリハリも大事だなって思っています」
完全復活に向けてのプランニングはできているが、今年いっぱいは、左肩の様子を見ながらの調整が続くことになる。痛みが消えれば、本来の泳ぎができると、坂井は確信している。
「痛みがない状態で泳げれば......というのはありますし、早くその状態で泳ぎたいですね。これまで苦しみましたから。でも、苦しんだのはすごくいい経験だと思うんです。順調に伸びていくことに越したことはないですけど、いろいろ試して失敗することで調整を含めていろんなことがわかったし、人間的にも少しは成長できたかなと。このスランプが今でよかったです。東京五輪前だと間に合わなかったので」
すべては「東京五輪のため」である。
だが、五輪に出場するためには、まずは失った日本代表の座を取り戻し、東京五輪の代表権を獲得しなければならない。国内でその代表枠を争う選手は強者ばかりだ。瀬戸大也をはじめ、早稲田大学の後輩で急成長している幌村尚、明大の矢島優也、パンパシのメンバーである小堀勇氣らがいる。
「リオ五輪以降は、代表権を獲得して当たり前と思うからダメになりました。まず初心に戻って、その切符を獲ることから始めます。日本人はいい選手が多いので勝つのは大変ですが......でも、昔のように目先の目標をひとつずつ突破しようという気持ちでやっていけたら、最終的に金メダルまでいけると思っています」
リオ五輪で獲った銀メダルはクローゼットのなかに眠っている。数々のメダルやトロフィーを部屋に飾ることはしない。過去の栄光にはすがりたくないからだ。だが、東京五輪で金を獲れたら気が変わるかもしれない。悩み、苦労した分、リオ五輪の時よりもメダルの価値がさらに上がるはずだからだ。
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