挑戦者としての再スタート。
坂井聖人が描く「東京で金」の復活プラン (2ページ目)
しかし、気分が乗らないからきつい練習ができない。
「1回、マジに水泳から離れようと思いました」
思い切ってそうすることもひとつの手段だった。極論、本番だけ結果を出せばいいだろうぐらいに思えればいいのだが、坂井はそこまで割り切って考えられなかった。
もともとメンタルは強い方ではない。「ビビりなんです」と、自ら言うほどだ。泳ぎが不調になると、「なんでダメなんだろう」と深く考えてしまう。そうして迷いの淵にハマり、抜け出せなくなる。自分のことだけではなく相手選手のことも気になる。ライバルの選手が結果を出すと調子がいいんだなと思い、不安になる。
「今もメンタルは自分の課題です。このとき、気持ちが折れて代表を逃してしまったのはその弱さもありますが、リオで獲ったメダルのプライドが大きいかなと思いました。大会に出たら、とりあえず優勝しないとありえないみたくなってしまうんです。自分はそうは思っていなくても泳いでいるとそう思い、前を行かれると勝手に気持ちが折れてしまう。このいらないプライドと戦っていかないといけないと思いました」
再起を図るべく、日本選手権に惨敗したレースと、よかった時の昔の自分の映像を見比べた。しかし、何が原因なのか、今ひとつはっきりしない。5月、パンパシフィック選手権の残り枠を賭けたジャパンオープンに参戦したが、矢島優也(明大)に敗れて2位になり、出場権は完全に失われた。
「ドン底の底に落ちましたね」
坂井は、そう言って苦笑した。
こうなる予感めいたものは、リオ五輪で銀メダルを獲得した直後からあったという。
「メダル獲って2日後ぐらいに思いました。いつか痛い目にあう日がくるだろうなって。今、そうなって『やっぱりな』と思います(笑)」
日本代表のメンバーから落選し、パンパシ、アジア大会も出場を逃した。ドン底の底に落ちた分、あとは上がるだけだ。そう思い、坂井は気持ちを切り替えて練習を始めている。最近になって全日本でなぜ6位だったのか、その原因を冷静に分析できるようになった。
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