【リオ五輪】萩野公介が金メダルを獲得。天才スイマーは真のエースへ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 萩野の五輪初優勝の遠因は、12年ロンドン五輪にあった。平井コーチはこうふり返る。

「(6月の)ヨーロッパ合宿で時間があったので、いろいろ話をしたときに、萩野が『4分08秒94で銅メダルを獲ったロンドン五輪のときは、予選を4分10秒01で泳いで、決勝では体が重かった』と言ったんです。4月の日本選手権も予選はいい感じに4分09秒80で泳いでいたけど、本人は予選で4分09秒はいらないのではないかと言っていました。それでバタフライはリラックスして泳ぎ、背泳ぎは泳ぎを意識しろと指示をしました」

 予選でいい泳ぎをして、勢いや自信をつけることは必要なことだが、普通の種目は午前に予選があって午後に準決勝があり、その翌日が決勝というスケジュール。しかし、世界大会の400m種目は、午前予選で午後決勝と1日で勝負が決する。だからこそ、ほかの種目とは違う力の配分も必要になる。

 それを意識できたのが萩野の成長した部分である。自身で、「昨年の肘を骨折して世界選手権に出られなかったという経験がなければ、今の自分はいないと思う」というように、泳げない時期にいろいろなことを考えたからこそ、たどり着いた考えなのだ。小学生時代から天才スイマーであり続けた彼にとって、あの躓きはとても重要なものだったのだ。

 平井コーチは笑顔で話を続ける。

「萩野の場合は才能もあるし、努力もできる選手だけど、ひとつ足りないのはビッグタイトルだと思っていたんです。それさえ獲れば、萩野公介というスイマーが完全体になって、マイナスなことを考えず自分のプラス面をドンドン考えていく、北島康介のようなスイマーになれるのではないかと。そういう時がとうとうやってきたという感じです」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る