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【マラソン】箱根駅伝1区、沿道から「おまえら、歩くな!」とヤジが飛ぶほどの超スローペースに、合田椋は「よし、きた!」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

【最初で最後の箱根は、三浦龍司に続く区間11位】

 第97回(2021年)箱根駅伝、大手町のスタートラインには、順天堂大・三浦龍司(現SUBARU)や早大・井川龍人(現旭化成)、青学大・吉田圭太(現GMOインターネットグループ)、東海大・塩澤稀夕(現富士通)らそうそうたる顔ぶれが並んだ。

「すごいメンバーで、こういう選手たちと肩を並べて走ることがそれまでなかったので、スタート前は楽しみでした。でも、いざレースが始まると、(けん制し合って)前代未聞のスローペースになって、沿道からも『おまえら、歩くな!』と言われたりしました(苦笑)。実際、(最初の1kmは)あのペースじゃ歩いているように見えても仕方ないよなと思いましたね。でも、自分にとってはラッキーでした。ハイペースになると、きつい状態のままついていくことになりますが、スローなら余裕を持っていける。『よし、きた!』って感じでした」

 途中で前を引いたり、仕掛けたりする選手もいたが、結局、スローのまま展開し、17km過ぎの六郷橋が勝負ポイントになった。例年、1区はここからペースが上がり、ふるい落としが始まる。この年も一気にペースが上がり、集団はコンパクトになっていった。

「きつさを感じながらも、いけるかもという思いもありました。そこから有力選手が落ちていったのですが、本当にきつかったのは、橋を下ってからの平地ですね。ここからさらにペースを上げるのかと。強豪チームとのレベルの差みたいなものを感じました」

 合田は、順大・三浦と同タイムの区間11位で2区のジョセフ・ラジニにつないだ。

「レース前は、先頭から1分差以内で襷を渡せたらと思っていました。でも、31秒でラジニに渡せたので、『30秒差でいけた。走りきったぞ』という満足感がありましたね。ただ、最終的にチームが(総合15位でシード権を失うなど)もうひとつの結果に終わったので、来年はリベンジするぞという気持ちでした」

 迎えた4年時、その悔しさを晴らすべく、まず箱根予選会に臨んだ。合田は留学生に次ぐチーム内2位(全体37位)の好走を見せたが、拓大は総合11位に終わり、9年ぶりに箱根駅伝出場を逃してしまった。

「この時は、それまでの人生のなかで一番気持ちが落ちました。3年の箱根が終わってから、この日のためにやってきたのに、目指すものがなくなった喪失感で何もやる気が起きなくなってしまいました。その2週間後には全日本(大学駅伝)が控えていたのですが、練習にも身が入らず、自分は何をやっているんだと思いながら過ごしました」

 自分もチームも走ることのできない箱根駅伝本選は、観る気になれなかった。「本当はここで走っていたはずなのに......」と思うと、悔しさが募った。高校卒業時に掲げた「箱根を走る」という目標は達成できたが、一度きりで終わってしまった。

 合田にとって箱根とは、どういう舞台だったのだろうか。

「箱根駅伝は、自分の競技人生を大きく変えてくれた舞台でした。中学、高校と無名の選手でしたが、箱根を走ったことで、いろいろなチャンスが巡ってきて、自分に自信を持つことができました。箱根がなければ、今の自分はいないと思っているので、箱根は自分の競技人生にとって最大の転機と言えると思います」

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合田椋(ごうだ・りょう)1999年生まれ、岡山県倉敷市出身。倉敷高から拓殖大に進み、箱根駅伝は3年時に1区を走って区間11位。大学卒業後は実業団の安川電機でスピードに磨きをかけ、初マラソンとなった今年2月の大阪マラソンで2時間0651秒(日本人6位、総合10位)を出し、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2028年ロサンゼルス五輪マラソン日本代表選考会、202710月3日開催)出場権と新人賞を獲得した。マラソン以外の自己ベストは5000m13294110000m274822、ハーフマラソンが1時間0055秒。

著者プロフィール

  • 佐藤俊

    佐藤俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

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