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【箱根駅伝 名ランナー列伝】出岐雄大(青山学院大学)常勝軍団"アオガク"の夜明け前に礎を築いた絶対エース 箱根2区区間賞に出雲駅伝は初栄冠のゴールへ (2ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Masato Sakai

【箱根ですべてを燃やし25歳で競技引退】

 しかし、学生長距離界のエースとして期待された4年時は故障もあり、苦しんだ。6月の全日本大学駅伝関東選考会は4組36着に終わり、チームは伊勢路の出場権を逃した。

 9月の日本インカレ5000mで6位に入ると、出雲駅伝は最終6区で区間3位。1年生ふたり(1区小椋裕介、3区久保田和真)を起用したスピード駅伝で、青学大は三大駅伝で初のタイトルに輝いた。

「状態がよくなくて、1区からアンカーに変更させてもらいました。いいときと比べると5~6割の状態です。トップでタスキを受け取る経験がなかったので、一番緊張しましたね。走っているときもドキドキしていました」

 エースは不調だったが、チームは全日本関東選考会の惨敗が浮上のきっかけになったという。

「今までなら『3位以内』が目標だったかもしれませんが、今季は出雲と箱根だけになり、夏合宿では出雲の『優勝』が具体的な目標になってきたんです。なかでも1年生の存在が大きかったですね。力があるうえに競技に対する意識も高く、それがチームに刺激を与えてくれました。出雲を制した自信を胸に、箱根でも優勝争いできるように、チーム全体でしっかり練習していきたい。もうひとまわり強くなった青学大の姿を見せたいです」

 青学大は正月決戦でダークホースに挙げられたが、エースは右ふくらはぎを痛めた影響で10区にまわり、区間14位。不完全燃焼に終わったかと思いきや、「これが今のベスト。悔いはありません」と出岐は潔かった。チームは総合9位で4年連続のシード権を確保。このとき1年生だった久保田、小椋、神野大地らを軸に、青学大は新時代に突入していく。

 出岐が卒業して約2年後、青学大は箱根駅伝で初優勝に輝くと、モンスター軍団になったのだ。

 一方、出岐は大学卒業後、中国電力に入社。1年目のニューイヤー駅伝(2014年)は最終7区(8位)を担い、チームの5位入賞に貢献した。2年目は全国都道府県対抗駅伝の最終7区で区間賞を獲得した。しかし、2016年2月の東京マラソンで2時間15分49秒の26位に終わると、「箱根駅伝以上の目標が見つけられない」と現役を引退。25歳での早すぎる決断だった。

 それでも"アオガク"を常勝軍団に導いた小柄な絶対エースは、今も箱根駅伝ファンのなかで強烈な輝きを放っている。

●Profile
でき・たけひろ/1990年4月12日生まれ、長崎県出身。長崎北陽台高(長崎)―青山学院大―中国電力。箱根駅伝には4年連続出場し3年時には花の2区で区間賞を獲得し、青学大史上最高(当時)の総合5位に貢献。同年度の全日本大学駅伝でも2区区間賞を獲得した。また、4年時の出雲駅伝では青学大史上初の学生三大駅伝初制覇となるフィニッシュテープを切った。卒業後はマラソンに挑戦するも、25歳で競技を引退した。

【箱根駅伝成績】
2010年(1年)1区9位・1時間03分48秒
2011年(2年)2区4位・1時間07分50秒
2012年(3年)2区1位・1時間07分26秒
2013年(4年)10区14位・1時間13分19秒

著者プロフィール

  • 酒井政人

    酒井政人 (さかい・まさと)

    1977年生まれ、愛知県出身。東農大1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区出場。大学卒業後からフリーランスのスポーツライターとして活動。現在は様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝は誰のものか』『ナイキシューズ革命 〝厚底〟が世界にかけた魔法』など。

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