【大学駅伝】「箱根に出るだけじゃつまらない」王者・青山学院大"次世代スター軍団"の野望 宮古島で見せた1年生の強烈な競争心と駅伝力の高さ (3ページ目)
【"山の神"候補の上野山は「遊行寺の坂」イメージして快走】
なかでも、10.0kmの4区を30分04で走ってチーム唯一の区間賞に輝いた上野山は原監督へのアピールに成功したと言えるだろう。箱根5区を走る「山の神」の後継として期待される存在だ。昨年、この区間を走った黒田朝日は29分29秒で、記録は35秒の差があるが、レースの組み立ては見事だった。
トップと23秒差の2位でタスキを受けた。「最初は追い風で、前の順天堂大が思った以上に速く、ちょっと焦りがありました」と言うが、じわじわと差を詰め、7km地点の前で捉える。東洋大、順大との三つ巴となるなか、8km付近から約600mで標高差20m超の坂を上るポイントでぐっと加速し、後続を引き離した。その後も第4中継所まで上り基調が続くなか、2位と6秒差でタスキを繋いだ。
「4区は上りが多く、自分が得意としているコース。最後は自信を持っていけました」と納得の表情を浮かべた。
上野山は高校時代の5000mの自己ベストが14分13秒92。石川や椙山など、入学時点で13秒台が5人いた同期のなかでは決して目立つ存在ではなかった。しかし、猛者にもまれるなかで着実に力をつけ、今は13分52秒93まで記録を伸ばした。さらに昨年11月のMARCH対抗戦では10000mのデビュー戦ながら、28分20秒82の好タイムで3組トップとなり、1年生にして箱根の16人の登録メンバー入りを果たした。
当初2区にエントリーされ、当日変更で出走こそ叶わなかったが、チームからの期待感の高さがうかがえる。伴走車に乗った原監督の声かけも箱根仕様だった。上野山が振り返る。
「原監督から『いいよ、いいよ、拳士朗いいよ。8区の遊行寺の坂をイメージして上れてるよ』みたいな声を掛けられました。それでしっかり上れましたね」
遊行寺の坂とは、箱根8区の15km過ぎのポイントで、約800mで標高差30m超の急坂を上る難所である。自身は以前から箱根5区への出走を希望しているが、体力的に厳しい区間終盤の上り坂で加速できた宮古島駅伝での走りは、原監督の評価をさらに押し上げたはずだ。
上野山自身、来年の箱根に向けて「総合4連覇がかかっているので、チーム一丸で頑張っていきたいと思います」と語り、その一角を担う覚悟をにじませた。
今年の箱根の優勝経験者でいえば、黒田朝日、宇田川瞬矢、塩出翔太、佐藤有一という4年生4人が抜けたが、黒田朝日の弟である黒田然は不敵な笑みを浮かべ、箱根4連覇に向けてこう言った。
「プレッシャーはありますが、それと同じくらい、自信もあります」
血気盛んな1年生たちが台頭し、部内競争や重圧を糧に個々がさらなる成長を見据える青学大。次の箱根に向け、どのような姿に変貌していくのか。新世代からも目が離せない。
著者プロフィール
長嶺真輝 (ながみね・まき)
沖縄在住のスポーツライター。沖縄の地方新聞社の記者時代に東京五輪、Bリーグを担当。現在はバスケットボールや高校野球を中心に各競技を取材し、雑誌やWEB媒体などで記事を執筆。「日本バスケの革命と言われた男」(双葉社、沖縄書店大賞優秀賞)の取材・文担当。
3 / 3

