検索

【箱根駅伝2026】「奇跡のシード獲得」帝京大 あきらめの悪い選手たちと監督の証言「やらかしたら、やり返すしかない」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【本当に学生ってすごいなと思いました】

 9区の尾崎は昨年6月、オーストラリアのハーフマラソンに出場。1時間01分12秒で優勝した島田に続き、大会記録を上回る1時間01分24秒の好タイムで4位入賞を果たしている。中野監督が勝負強さを期待して配置した4年生だ。尾崎はこう語る。

「最初の1kmはリラックスして入ったのですが、2分30秒台のラップで『今日はいける』と確信しました。でも、(7kmから8kmの)権太坂が終わるまではいったん落ち着いていこうと考えました。その後のラップタイムも予定より速かったのですが、自分の中では『余裕を持ってきているのに、思ったより速いな』という感覚で。15kmの通過もけっこう速かったので、そこからは本当に必死に......。『10区の槍田を少しでもラクにさせてあげよう』と思いながら走りました」

 結果は区間賞から17秒差の区間4位。いよいよ10位の中央学院大に13秒に迫った。そして、10区の鎗田大輝(4年)は中間点付近で10位に上がると、13㎞過ぎには日大も抜いて9位に、20㎞過ぎには8位の創価大も抜いて見た目の順位は8番目でゴール。区間5位の走りで圧巻の逆襲劇を締めくくった。復路5区間はすべて6位以内だった。

 過去2回、往路を走っていた柴戸と尾﨑を、復路のポイントとなる7区と9区に配置した鉄壁の布陣。1区の原と2区の楠岡について、「直前のトライアルでは本当によかったので、彼らの失敗だとは思っていない。私のミスです」と言う中野監督は、「今回のポイントは、往路の島田も含めた4年生。主要区間(3区、7区、9区、10区)で、しっかり役割を果たしてくれたのは大きいと思う」と4人の4年生を称えた。

「往路17位から最後は9位まで上げられたことで、自分たちの力をもう一度確認できました。でも、あの状況でもみんなが落ち着いていたというのがすごいなと思いますね。開き直りなのかはわからないけど、たいしたものです。本当に学生ってすごいなと思いました」

 今季の帝京大は、前回の箱根を走ったエースの山中博生(現・大阪ガス)や小林大晟(現・三菱重工)ら4人の4年生が抜けて、戦力ダウンも囁かれるなかでのスタートだった。だが、チームはそこからさらに成長を遂げた。

 今回の箱根では、原や楠岡など5人の3年生が走った。下級生からの地道な強化を経て、4年生がチームの主力になるのが伝統でもある帝京大、来年はどんな顔を見せてくれるのか楽しみだ。

 

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る