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【箱根駅伝2026】早稲田大が15年ぶりの総合優勝へ本気モード 主将エースと "山の名探偵"を中心に「個」が成長 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【カギを握る「一般組」で際立つ小平の成長】

 さらに、早大にとって欠かせないのが、いわゆる"一般組"、つまり、附属校・系属校出身や指定校推薦や一般入試で入った選手だ(早稲田実業高出身の吉倉も、大別すればその区分になる)。

 この一般組で、今季の成長株が小平敦之だろう。早稲田実業高出身で、政治経済学部に通う3年生だ。 

 今夏は、コロナに罹患したり、企業へのインターンがあったりしたため、北海道・紋別での選抜合宿には参加できなかったが、暑い所沢でしっかりと走り込んだ。

「夏合宿の目的って、自分自身を追い込んで、できるだけベースフィットネスを上げることだと思うんですけど、暑さもあるなか、自分自身はわりと距離は踏めるほうなので、そこでスピードをいかに高められるかを意識しながら練習していました」

 自主性を持って取り組んだ成果は、9月28日のThe Road of WASEDAで現れる。5kmを13分58秒と好走。そこから好調を維持し、全日本では出番を勝ち取り5区区間7位で走った。

「一つひとつが自分自身のターニングポイントだと思って取り組んでいます。主力のケガもあって自分にチャンスが巡ってくるかもしれない。そうなった時に、ここで頑張れないとたぶん自分は箱根を走れないだろうなと思って取り組みました。そういうマインドが今の自分につながっていると思います」

 小平は"自主性"の鑑のような選手だ。私生活では1年の冬頃から弁当を手づくりし、授業に持参している。最初は節約が目的だったというが、貧血だったこともあってバランスの取れた食事を心がけている。その分、オフの日には外食を楽しんでいるという。

 11月の上尾シティハーフマラソンでは、一定のペースを刻むペース走として臨みながら、余裕を持って1時間02分28秒の自己ベストをマークしており、ますます調子を上げてきている。

 早大が箱根で優勝する時には、必ずと言っていいほど、一般組の堅実な走りがある。15年前に総合優勝した際には、小平の高校時代の恩師である北爪貴志先生が8区区間3位と好走し、首位をがっちりとキープした。

「先生が優勝した時には、やっぱり一般組って言われる選手たちの気概がチームに及ぼす影響が大きかったとおっしゃっていました。自分自身も、"一般組ならでは"と言うのも変ですけど、取り組む姿勢や地道に積み重ねるところをチームに示していければと思っています。

"一般組"と"推薦組"とに分けて、限界を決めるのはよくないと思うんですけど、一般組で入ってきた選手たちが上級生になった時に、しっかり結果を出して下級生に示すことは、チームとしての上昇志向にもつながると思っています」

 一般組の矜持を持って、箱根でも結果を示す覚悟はできている。

 4年生の伊藤幸太郎、宮岡凜太も一般組で、4年間かけて着実に力をつけてきた。ハーフマラソンではそれぞれ1時間02分14秒、1時間01分59秒の好タイムを持っており、長い距離ほど力を発揮する選手たちだ。最初で最後の箱根駅伝に備えている。

"圧倒的な個"の影に隠れがちだが、今季の早大は彼らのような選手もちゃんと育っている。以前、花田監督は「勝つ時は、早稲田らしい勝ち方をする」と話していたことがあった。今回総合優勝を成し遂げるとすれば、それこそが"早稲田らしい"勝ち方になるのではないだろうか。

つづく

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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