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中島佑気ジョセフが語る400m日本新記録の舞台裏 世界陸上1カ月半前は出場すら危うい「崖っぷち」だった (4ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【あそこまで後半を走れたのは初めて】

「今考えると、そこで切っていなかったら、これ(今回の取材)も含めて全部なかったんですよね。恐ろしいですね」

 こう笑って振り返るが、中島が言うように、このレースの結果によって人生はまったく違うものになっていたかもしれなかった。

中島佑気ジョセフは世界6位という結果をどう思うのか photo by Koreeda Ukyo中島佑気ジョセフは世界6位という結果をどう思うのか photo by Koreeda Ukyoこの記事に関連する写真を見る 逆境から起死回生を果たした経験は、中島を大きく成長させた。

「綱渡りみたいな感じでしたけど、背水の陣を敷けたというか。『(参加標準記録を)切らなきゃ切らなきゃ』ってプレッシャーをかけてしまうのではなく、これだけ苦しい状況のなかでやれることはやって、状態を整えるということができました。

 あとは『なるようになるさ』ぐらいの感じで、わりと楽観的に走れたのがよかったです。そこでまたひとつ、ブレークスルーがあったなっていうふうに思っています。

 どれだけ重要な試合や切羽詰まっている状況でも、ポジティブにリラックスすることは忘れずに、自分のやれることだけをやる。自分で〈コントロールできること〉と〈コントロールできないこと〉をしっかり分けて考えるのは、今回の東京世界陸上にも生きたと思います」

 また、その後に出場したトワイライトゲームスでも収穫があった。この日の日産スタジアムは、バックストレートが強い向かい風だった。

「止まるんじゃないかっていうぐらいの向かい風だったので、前半が22秒2ぐらいと、めちゃくちゃ遅いタイムで入ったんです」

 参考までに、世界陸上の予選で中島が日本記録をマークした時の前半200mの通過は21秒52だ。ちなみに決勝は21秒68で、ファイナリストの8人の中ではダントツの最下位の通過タイムだった。この時は、それより0.5秒も遅かった。

「400mって後半でいくら上げようと思っても、体も疲労しきっているので限度があるんですよ。でも、(トワイライトゲームスでは)後半のスプリットがめちゃくちゃ速かったんです」

 200mから300mが11秒1、300mから400mが11秒5ほどでまとめて、トータル45秒10でフィニッシュした。前レースの富士北麓で出した自己記録には届かなかったが、レース内容に好感触があった。

「前半と後半で、ほぼ差がなかった。もともと後半が強いタイプではあったと思うんですけど、あそこまで後半を走れたのは初めてでした。前半をもうちょっとうまく組み立てて、後半もしっかり力を出せれば、いいレースができるんじゃないかなと思いました。すごく収穫のあったレースでしたね」

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