中島佑気ジョセフが語る400m日本新記録の舞台裏 世界陸上1カ月半前は出場すら危うい「崖っぷち」だった (3ページ目)
【記録の有効期限3週間前に滑り込み】
ただ、平静を装うように努めていたものの、世界陸上への道のりに黄信号が灯ったのも確かだ。
「そこまで追い込まれると、イチかバチかになりますよね。日本選手権でとりあえず決勝に残ったとしても、その後で参加標準記録を切らなければなりませんから。それも、試合数が限られていました」
ようやく迎えた今季初戦が、いきなり日本選手権(7月4日~6日)になった。3連覇がかかった一戦は、約10カ月ぶりのレースでもあった。決勝にはなんとか進んだものの、本来の走りにはほど遠く、5位に終わった。
これが、世界選手権の約2カ月前のことだった。
「WAランキングで出るのは絶対無理な状況だったので、参加標準記録を狙うために海外に遠征しようっていう話もあったんです(※実際にチームメイトの佐藤拳太郎は日本選手権直後にカナダ・エドモントンのレースに出場した)。
でも、その時の自分のポジションでは海外に行ったところで(記録を狙うための)いい試合に出られないし、いいレーンでも走れない。じゃあ、腹を据えて1カ月間しっかり練習をして、あと2試合で参加標準記録を切るしかない、っていうことになりました。いやぁ、その時は追い込まれていましたね(苦笑)」
記録を出さなければならない期限が迫るなか、その後に予定していたレースは2試合──8月3日の富士北麓ワールドトライアル2025(山梨・富士山の銘水スタジアム)と8月20日のトワイライトゲームス(神奈川・日産スタジアム)だけだった。そのいずれかで44秒85以内で走らなければならない。まさに「崖っぷち」に立たされていた。
しかしながら、中島はポジティブな思考の持ち主だ。
「ただ、(世界陸上に)行けなくはない、と思っていたんですよ」
決して強がりなどではなく、そんな自信をも持ち合わせていた。
そして実際に、そのチャンスをモノにしてみせた。
最初のチャレンジとなった富士北麓ワールドトライアルで、日本人4人目の44秒台に突入。それどころか自己記録を一気に0.2秒も短縮し、44秒84をマークして世界陸上の参加標準記録をも突破。記録の有効期限3週間前にギリギリで滑り込んだ。
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