4度目の五輪で初めてマラソンに出場した福士加代子「メダルを獲りたいと有言実行できる人はすごいですよ」 (2ページ目)
【自分の逃げ場をなくすための金メダル宣言】
好きではないマラソンだが、マラソンならではの面白さは感じたという photo by Setsuda Hiroyuki
リオ五輪の前は、単独合宿ではなく、チームの海外合宿に参加した。
「私は、マンツーマンはダメなんです。練習中に1対1で声をかけられるじゃないですか。『がんばれ』って言われても、『うるさい。黙れ。もう無理』って言ってしまうんです(苦笑)。しかも、マンツーマンの合宿でちゃんと走れた記憶がない。仲間が3、4人いるなかで混ぜてもらって練習していました」
リオ五輪のコースは、前半10kmと後半10kmを軽く走って確認し、全体をざっくりと把握した。レース前日、永山監督からは「最初は前についていけ。後半は上げて帰ってこい。いけると思ったらいけばいい」と言われた。
「監督はもう20年間、同じことしか言わない(笑)。そういう意味ではブレない人なんだなって思いましたね。メンタルも『前に攻めるだけでいい』って感じで、もうやるか、やられるかの世界でした。実際、私自身もいくならとことんいくしかないというスタイルで、前にしかいけない人だったんです」
リオ五輪前、福士にしては珍しくメダルに言及し、「金メダルを獲る」と宣言した。
「金メダルと言ったのは、言わないとモチベーション的にも気持ち的にも持たなかったからです。それまで(トラックで)オリンピックに3回出て、オリンピックはどんなものかもわかっていたし、正直、飽きてきていたんです。
でも、リオはマラソンだから初出場みたいな感覚で、オリンピックに出ただけでいいみたいにならないようにしないといけない。だから、目標を明確にして、自分の逃げ場をなくし、自分に負けないようにするために必要なことだったんです」
金メダルを目指すと言った以上、やらないといけないと思い、練習で自分を追い込んだ。レース本番前日には、あとはスタートを待つだけという穏やか気持ちになれた。
2016年8月14日、リオ五輪の女子マラソンがスタートした。
序盤の5kmは17分23秒というスローペースで入った。12kmの給水ポイントで第2集団に位置していた福士は前を追い、先頭集団に追いついた。だが、中間地点で先頭集団がペースアップすると、福士はそのスピードについていけず、25km地点ではトップと1分の差がついた。
「20kmぐらいかな、ふっと力を抜いたら、その間に前がいってしまって......。切り替えて、前に追いつけばよかったんですけど、そのままいかれてしまいました。そこから自分の調子が戻ってくることもなく、気がついた時にはもうガス欠でしたね」
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