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【大学駅伝】中央大・溜池一太が全日本選考会で圧勝も不満顔のワケ 「自分がエースに」 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text by Wada Satoshi

【アメリカ遠征で受けた刺激を力に】

 今年に入ってから溜池は5000mを中心にレースに出場してきた。

 2月のボストン大デヴィッド・ヘメリー・バレンタイン招待(アメリカ)では、室内のショートトラックのレースで13分39秒11をマーク。新年度を迎えると、4月12日の金栗記念選抜で13分35秒33、4月29日の織田記念国際で13分37秒12、5月11日の関東インカレで13分36秒93と、自己記録(13分28秒29)の更新とはならなかったものの、高いレベルで安定した結果を残している。

「ここまでアメリカの室内レースを含めて4戦走って、全部13分40秒を切って、高いところで安定感が出てきた。去年よりもう一段階強くなったかなって思います」

 溜池もまた、自身の成長に手応えを口にしている。

 箱根駅伝後には後輩の岡田開成と共に、昨年に続きアメリカに渡ってトレーニングを積んだ。しかし、そこでは世界のトップランナーの走りを目の当たりにし、思わぬ挫折感を味わわされた。

「今年もフィッシャーの走りを見せてもらったんですけど、去年よりも強くなっていました。正直、ちょっと遠いなというか、追いつけないなと思ってしまいました。

 ニコ・ヤングも去年より強くなっていましたし、彼らと走って、最後まで競り合うイメージがつかなくなってしまった」

 フィッシャーとは、昨夏のパリ五輪で10000mと5000mの2種目で銅メダルに輝いたグラント・フィッシャー(アメリカ)のこと。そのフィッシャーは、溜池も出場したボストンの室内競技会で5000mのショートトラック世界新記録(12分44秒09)を打ち立てた。

 ニコ・ヤング(アメリカ)は溜池の1学年上の選手で、5000m12分台、10000m26分台と、共に日本記録を大きく上回る自己記録を持つ。

 1年前からさらに力をつけた彼らの走りを目の当たりにし、溜池のなかにネガティブな感情が芽生えていた。

 しかしながら、視点を変えれば、より実感を伴って世界との距離を測れるようになったと見ることもできる。

「そういう視点で世界のトップの選手を見られるようになったのは、去年から成長していると思います」

 溜池自身もこのように前向きに捉えていた。

 5月の関東インカレの際に溜池が口にしていたのは世界への思いだ。

「世界陸上はまだあきらめていません。6月に海外でレースがあるので、13分01秒(世界選手権の参加標準記録)をしっかり見て、そこで切って、日本選手権に勝ちたい」

 固い決意を口にしていた。

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