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日本の駅伝文化を支える外国人ランナーたちのリアル 日本語も仕事も覚えたのに引退すると滞在ビザを取得できない... (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【取得に手間のかかるビザは1年ごとに更新】

 ケニアなどでいい選手を見つけ、契約条件がまとまり、日本に来てもらう段階になると、次はビザの問題が生じる。多額の費用を払うエージェント経由の場合はその手間をまかせることができ、また、日本の大学経由で入社する場合はビザの変更だけで済む。だが、コモディイイダのようにケニアで契約した高卒の選手を日本に連れてくる場合、自分たちで「特定活動ビザ」を申請し、取得しなければならない。

「これがなかなか大変で、行政書士に手伝ってもらい、選手の経歴書や招聘状を用意してビザを申請します。3年のビザを求めていますが、(もらえるのは)いつも1年ですね(苦笑)。そのビザを何度か更新しているうちに3年になることもありますが」

 そうしてビザを取得し、競技活動と並行して日本語と仕事のやり方も覚え、生活や文化になじんだとしても、引退するとさらに大きなビザの壁が立ちはだかる。

「日本の大学を卒業した選手であれば、在籍していた学部に関連する職業に就ける可能性もありますが、高卒で日本に来た選手の場合はほぼ無理。われわれのチームにも、言葉や(スーパーの)仕事を覚えて十分に働けて、本人もその生活を続けることを希望しているのに、引退するとビザの問題で雇用できず、ケニアに帰るケースがある。人手不足と言いながら、国は非常にもったいないことをしているなと思いますね」

 コモディイイダに所属するケニア人をはじめ、実業団で活躍する外国人選手の多くは真面目だ。仕事を与えられている場合はきちんとこなし、練習でも手を抜かず、あくまで結果を求める。日本人選手以上に貪欲だ。

 とはいえ、うまくいかないケースもある。ケニア人選手の多くは年に数回帰国するが、そこで現地の選手にもまれて、さらに強くなって戻ってくる選手がいる一方、家族と過ごすなかで遊んでしまい、走力を落として帰ってくる選手もいる。また、選手個人ではなく、家族のことで問題が起こるケースもある。

 以前、ある実業団チームにいたケニア人選手は真面目な性格だったが、家族は日本からの送金で高級車を買っていた。しかも、より条件のよい実業団で走る選手の給料を聞いたらしく、彼に対して「もっとお金をもらっているはずなのに、私たちに送っているお金が少ない。お前が自分で使っているんだろう」と文句を言ってきた。彼はチームに給料アップを求めたものの、「君の実力ではこれ以上はあげられない」と告げられ、退部に至った。

 会沢監督もこう話す。

「ケニア人は家族の影響が結構大きいですね。貧しい家族を支えている選手への要求がどんどんエスカレートすることもある。また、家族だけではなく、現地のコーチが金銭を要求してくるケースもあります。金銭でトラブルになったり、やめる選手は多いと思います」

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