検索

日本の駅伝文化を支える外国人ランナーたちのリアル 日本語も仕事も覚えたのに引退すると滞在ビザを取得できない... (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【どうやって実業団に加入するのか】

 今、日本の陸上界には多くの外国人ランナーがいる。世界を目指す日本人選手のレベルアップに欠かせない存在である彼らは、どのように実業団に加入し、どのような立場に置かれ、また、退部した後はどのような道を歩んでいるのか――。

 現在、チームに4人のケニア人選手を抱える会沢監督はこう語る。

「ケニア人の選手が実業団に入るパターンは、日本の大学で活躍して契約するケースと、ケニア現地のエージェント経由で加入するケースと、実際に現地に行ってトライアルをして獲得するケースの3つが主になります。

 われわれの場合は、現地の高卒の選手と契約するケースもありますが、基本的には他の実業団チームで戦力外になった選手に、社風、環境、給料などの待遇を伝え、そのうえで加入を望むならトライアルを行なうことが多いです。その結果を踏まえ、チームの規律を守れそうな選手と契約を結んでいます」

 現地のエージェント経由で選手を獲得する実業団は多い。だが、持ちタイムやレース、練習の動画を見るだけで、その選手の実力を見極めるのは難しい。

「エージェントに依頼した場合、その選手が本当に走るかどうかは、日本で走ってもらうまではわからないですね(苦笑)。ギャンブル的な要素もあるので、どこの実業団も基本的には箱根や都大路(全国高校駅伝)で結果を出している選手を取りたいというのがあると思います」

 とはいえ、大学時代に駅伝などで結果を残していても、実業団加入後はなかなか結果を残せない選手もいる。"走れる外国人の法則"は今のところ定かではないが、彼らのモチベーションになるものは今も昔もあまり変わらない。会沢監督はこう言う。

「彼らにとって一番大きなモチベーションになるのは報酬(給料)でしょう」

 外国人選手はある意味、出稼ぎ労働者だ。たとえ期間は短くても、プロ契約を結び、高い報酬をもらうことを望む。日本人選手と違い、引退後に社業に就くケースはほぼないため、稼げるときに稼げるだけ稼ぎたいと考えるのは当たり前だろう。

 ただ、雇う側からすれば、プロ契約なので評価する基準が高く、厳しくなる。

「企業によっては、5年以上は契約しないとか、早ければ2、3年で選手を入れ替えるところもあります。しかも、彼らはいつも競争と評価の厳しい世界にいる。大会はもちろん、普段の練習から、つねに『次はいくらでもいるんだぞ』というプレッシャーとストレスを感じながら走ることになる。それが嫌でやめる選手もいます。

 われわれのチームにいる(ベナード・)キマニも、以前に所属していたチームではかなりストレスを感じていたようです。でも、今は給料こそ減ったものの、いわばストレスフリーの環境で(仕事もしながら)結果を出しています。外国人選手が結果を出すには、単に『結果を出せ』じゃなく、どういう結果を出せば報奨金が出るのかとか、細かな説明をする人がチームにいて、サポートしていくことが欠かせないと思います」

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る