箱根駅伝2025 創価大・吉田響と青学大・黒田朝日が驚愕の2区区間新 3人が1時間5分台の史上最高レベルの戦い、証言で振り返るそれぞれのレースプランとは―― (2ページ目)
【力を出しきった駒大・篠原、悔しさ残る國學院大・平林】
初の2区出走で区間4位の走りを見せた駒大・篠原 photo by Kishimoto Tsutomu 青学大とともに3強に挙げられた駒澤大と國學院大は、2区で後れを取ってしまった。
2位でタスキを受けた駒澤大の篠原は前半、当初の予定どおり2分50秒ペースでラップを刻んでいた。途中まで東京国際大のエティーリと並走する形になったのは偶然だという。権田坂の下りからケニア人留学生が飛び出しても、さほど気に留めなかった。
「もうちょっとついていったほうがよかったかもと思う反面、自分のラストの止まり具合を見ると、あれでよかったのなと」
驚いたのは、青学大の黒田と創価大の吉田の追い上げ。沿道の応援で後ろから迫ってきている気配を感じていたものの、横に姿を見せたときはさすがに目を丸くした。
「あのタイム差(鶴見中継所で青学大と12秒差)で追いつかれるとは思っていなかったので。黒田くん、吉田響も強かったです。圧倒的な力があれば、2区の適性なんて関係ないと思って臨みましたが、あのふたりの走りを見ていると、適性がないと勝てないと思いました」
ハーフマラソンで日本学生歴代1位の記録を持つ大学陸上界のトップランナーも、初めて挑んだ2区の難所"戸塚の急坂"には、予想以上に苦戦を強いられたようだ。
「(ラスト3kmの)あれは壁でしたね。手を使って上りたくなるよう感じ。20km以上走ってからの壁はきつかったです」
最初で最後の2区は区間4位でまとめ、タイムは1時間06分14秒。数字は決して悪くはないものの、5位までチーム順位を落としたのは納得できなかった。
「勝負として考えれば、もうちょっとでしたね」
戸塚の待機テントで誰より悔しさを露わにしていたのは、3年連続2区で出走した國學院大の平林。チーム順位を6位から8位に下げたことに加え、区間8位となる1時間06分38秒のタイムも受け入れがたいものだった。出雲駅伝、全日本大学駅伝に続き、三冠を狙う大黒柱は、地べたにぐったり腰を下ろすと、表情をゆがめたまま率直な思いを吐露した。
「チームに対して、申し訳ない結果でした。(運営管理車に乗る前田康弘)監督からは『ここで負ければ悔いが残るぞ。ラスト、頑張れ』と言われたのですが、なかなかうまくいかなかった。区間順位、レース展開ともに悔いが残るものになりました」
ハイペースで突っ込む選手たちにペース配分を惑わされ、後半にまさかのスタミナ切れ。マラソンの日本学生記録を持つエースは、自らの走りに怒りを覚えているようだった。
「(エティーリらの)留学生たちについていって、いきすぎたのかなと。権太坂(14km手前)から上げるつもりでしたが、上がりきらなかった。一度離れて、後半勝負でもよかったのですが、調子がよかったので......。
悔しいかぎりです。準備は問題なかった。自分の実力が足りなかったと思います」
3強の明暗が大きく分かれた2区。流れを引き寄せた青学大は往路優勝を果たし、4位の駒澤大に3分16秒差、6位の國學院大とは5分25秒差をつけた。2位の中央大とも1分47秒差。前回大会は往路終了時点で2位と2分38秒差をつけ、復路も首位のまま総合優勝を果たしている。果たして、得意の独走態勢に入った前回王者を止めることはできるのか--。
國學院大・平林は3年連続の2区出走だったが、区間8位と悔しい結果に終わった photo by Kishimoto Tsutomu
著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。サッカー専門誌の編集記者を経て、通信社の運動記者としてサッカー、陸上競技、ボクシング、野球、ラグビーなど多くの競技を取材した。現在はジャンルを問わずにフリーランスで活動。
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