箱根駅伝へ駒澤大学に黄信号? 主将・篠原倖太朗が抱える不安とは「危機感が足りない」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【駒澤大学が一歩出遅れ?】

 黒田朝日(3年)や太田蒼生(4年)、鶴川正也(4年)、若林宏樹(4年)ら主力と中間層が好調を維持する青学大や平林清澄主将(4年)を軸に選手層が分厚くなった國學院大大、さらにホクレンの大会で溜池一太(4年)ら出場選手が自己ベスト更新を出し続けた中央大と比較すると、やはり駒澤大の出遅れている感や選手層の薄さは否めない。

 篠原が憂慮しているのは選手たちの「危機感のなさ」だ。
 
「自分は秋に向けて危機感を感じていますけど、まだ夏だからと思っている選手が多いですね。のんびりしているので、もう夏だよって理解してやっていかないと。それに自分じゃ無理だなと思っている選手も多いんです。芽吹さんたちの代が強かった分、下級生たちが駅伝に絡むことができなかったので、駅伝に対する取り組み方というか、要領が分かっていないというか......。そういうところで意識の差みたいのがチーム内で出てきていると思います」

 そうした現状だけに今回の夏合宿は、例年以上にタフになりそうだが、篠原も主将として「ちょっと厳しく」と鬼になる覚悟を決めている。

「自分は厳しくやれるタイプですが、キツいことを言った後で、あぁー言っちゃったって、ひとりで悲しんじゃいます(苦笑)。でも、そんなことも言っていられないですし、過去のキャプテンのやり方を活かして、例えば田澤さんはひとりで引っ張っていて、山野さんはみんなと仲良くやって、芽吹さんの時は力がある選手が全員でって感じだったので、3人のいいところを受け継ぎながらやっていきたいと思っています」

 藤田監督は主将の夏合宿参加を「練習での姿勢や走りそのものを含めて、選手への影響力を考えると非常に大きい」と語り、篠原主将が引っ張ることで夏での巻き返しに期待している。篠原自身も昨年、主将の鈴木芽吹がいることでのプラス効果を実感し、それを今年は自らが果たそうとしている。

「キャプテンがいると、締まるんですよ。一番強い人がラスト1本とか、ラスト1キロを引っ張るんですが、自分が引っ張るのと芽吹さんが引っ張るのとちょっと締まり方が違いますし、練習の消化率というところも大きく変わってくるんです。今年の夏は、自分がそうなれるように頑張ってやっていきます」

 一歩も二歩も前を行く他校に対して、どれだけ戦力を整え、勝負できるチーム作りをしていけるか。「強い駒澤」の復活に向けて、藤田監督と篠原主将の勝負の夏はまだ終わらない――。 

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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