パリ五輪男子1万m選考会で葛西潤が躍動! 創価大時代の箱根駅伝で味わった苦悩と成長 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【チャンスがあるならチャレンジしたい】

 ケガなく練習にじっくり取り組んだ結果、葛西は昨年11月の八王子ロングディスタンス1万mで27分36秒75の自己ベストを出すと、今年元日のニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)では上り坂と強風の難区間の5区で区間2位の走りをして、チームの3位に貢献した。そしてそこからは今回の日本選手権一本に照準を絞り、きっちり合わせてきたのだ。

「正直、1年前はパリ五輪が見える位置に来られるとは思っていませんでした。でも年始ぐらいからすごい調子が上がってきたので、急きょプランを変更して前倒しでやってきているので、(練習の質を上げて)若干しんどいところはありますが、せっかくなのでチャレンジしたいと思います」

 4月30日時点の世界ランキングは、葛西の有効対象ポイントは2レースのみであるため、五輪出場枠には及ばない。レースのグレードが高い今回の日本選手権優勝で、大きなジャンプアップになるが、それでも日本勢上位3人とはまだポイント差がある。そのため2週間後の5月18日にロンドンで行なわれる、トップ選手が集うレースに出場する予定だという。

「もう1本、2週間後のレースでも(今回と同じポイントとなるくらいの記録を)揃えたい。それでも、やっとパリ五輪を目指し始める状況なので、なかなか厳しい戦いですけど、チャンスがあるのでチャレンジしたい。今日(の日本選手権)よりはるかにレベルの高いレースになると思うけど、今は26分台もしっかり見える練習ができているので、今度はタイムをしっかり狙ったレースを組んで挑戦したいと思います」

「26分台を最初に出す日本人選手になりたい」とも言う葛西だが、まずは大きくなってきたオリンピック出場という夢の実現に向け、"ラストチャンス"に懸ける決意を固めている。

プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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