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田中佑美が語るパリ五輪への思い 日本人4人目の12秒台は通過点「ビビらずに勝負したい」 (4ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【電光掲示板を見つめながら祈っていた】

── 決勝は4レーン。ほかの12秒台の選手は全員が外側のレーンでした。

「私は周りが気になってしまうタイプなので、特にこういう大事なレースでは先にスタートリストを見ないようにしています。横を気にせずに走るために、自分でやるべきタスクを極力減らしています。

 それでも、『追いつかれたらどうしよう』とか、いろいろ考えてしまうんですよね。でも、そう考えるといい結果につながらないので、思考が出てきては、丸めて捨てて、丸めて捨ててっていうのを繰り返していました」

── 決勝は、4人が横一線でフィニッシュし、結果が出るまでに少し時間を要しました。

「世界選手権に出るために自分が何ポイント獲得しているか、だいたい把握していたので、3番に入れば出られるだろうという算段でレースを走っていました。

(フィニッシュ後は)周りでいろいろ起きている(※)のは気づいていたんですけど、それどころじゃなくて、ひたすら電光掲示板を見つめながら、お願い、お願い......と祈っていました。3番に名前があって、よかったです」

(※=速報で真っ先に名前が掲示されたのが4着の福部真子だったため、混乱を招いた)

── 2022年に出場を逃した世界選手権に、昨年は出場を果たしました。ユース、U20と各世代で世界大会を経験してきましたが、シニアの世界大会はやはり違うものでしたか。

「はい。まったく違うなと思いました。出場が決まった時点で、雰囲気に飲まれたり、浮き足立ったりするのは目に見えていたので、そうならないように気持ちの準備はしていたのですが......。逆に、気持ちを抑えすぎて、要らないプレッシャーだけを背負って臨んでしまいました。

 国内の試合では簡単にできているのに、ほかのヨーロッパの試合でもちゃんと走れていたのに、この大事な舞台で自分のやりたいことが何ひとつできませんでした。実際に、準決勝に進めませんでしたが、そういう悔しさでいっぱいでしたね」

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