田中佑美が語るパリ五輪への思い 日本人4人目の12秒台は通過点「ビビらずに勝負したい」 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【真っ先に浮かんだ谷川コーチの存在】

── 筑波大学では男子110mハードルの元日本記録保持者である谷川聡コーチ(シドニー五輪とアテネ五輪に連続出場)の指導を受けています。

「谷川コーチに見ていただきたかったのも、筑波に来た理由のひとつでした。

 練習場所を選ぶうえで大事にしていたポイントが、ハードル選手がいること。そして、私に足りない知識的なものをフォローしてくれるコーチがいるところであること。このふたつでした。そこで真っ先に浮かんだのが、谷川コーチでした。

 とはいえ、今から谷川コーチのように賢くなるには、人生がもう1個必要です。そうではなくて、側に生き字引がいるので、そのなかから必要なものをチョイスしていくっていう感じで取り組んでいます。

 社会人1年目の苦しかった時期は『自立できていない』という思いがあったのですが、全部を自分でやる必要はなかった。私にとっての自立は、周りの方々の力を上手に借りながらコーディネーションしていくことでした。今は、それがしっくりきています。

 できないことがたくさんあっても、それで見捨てるコーチではありません。結果がなかなかでなかった時でも、落ち着いてまたがんばろうと思うことができました。

 また、それまでは練習などで1本走ってみて、それからどこを変えたいかを考えていたのですが、コーチがついたことで、自分が目指すものを先に見据えたうえで、逆算してトレーニングを組むことができるようになりました。それが一番、大きな変化かなと思います」

リラックスして撮影を楽しんでいた田中佑美選手 photo by Sannomiya Motofumi(TRIVAL)リラックスして撮影を楽しんでいた田中佑美選手 photo by Sannomiya Motofumi(TRIVAL)この記事に関連する写真を見る── 谷川コーチとの取り組みがハマったと感じたのは、いつ頃からですか。

「社会人2年目の日本選手権のあとぐらいから、動きがよくなってきたと思いました。でも、そのタイミングでケガをしてしまい、試合に出場できないまま冬季に入りました。そして、社会人3年目の結果につながりました」

── 社会人2年目の日本選手権では3位に入っています。

「あれは本当にラッキーな3番だったと思っています。でも、あのタイミングで目に見える形で成果を得ることができたことは、精神衛生上、とてもよかったと思っています」

2 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る