田中佑美が語るパリ五輪への思い 日本人4人目の12秒台は通過点「ビビらずに勝負したい」 (3ページ目)
【これまでの私ならチャレンジしなかった】
── 3年目に12秒台、そして世界選手権出場と、飛躍を遂げることになります。2年目のシーズンで得られた手応えが大きかった。
「3年目のシーズンの前に、初めて単身でヨーロッパ遠征に行きました。私にとっては、それ自体がチャレンジでした。これまでの私なら、たぶんチャレンジしなかったと思うんです。
でも、周りの薦めもありましたし、オレゴン(2022年の世界選手権)に行けなかった悔しさも後押しして、ヨーロッパに遠征しました。これも(飛躍の)大きなきっかけだったと思います」
パリ五輪出場を目指す田中佑美選手 photo by ©Fujitsuこの記事に関連する写真を見る── 単身での海外遠征は苦労もあったのではないでしょうか。
「そうですね。でも、単身と言っても、同じ大会に出場する日本人選手もいたので、ずっとひとりぼっちだったというわけではありません。楽しい遠征でした。
海外の大会では、初めて会った外国人と同部屋になることもあります。それで仲良くなって、インスタグラムをフォローし合い、その子の大会結果を追ったりしています。言葉は流暢には話せませんが、陸上を通じてコミュニケーションを取れるのは得難い経験ですし、楽しいです」
── そういった変化も楽しんだ。
「はい。食事が変わっても大丈夫ですから。(遠征中の苦労話も)終われば全部ネタなんで(笑)」
社会人2年目に手応えを得た田中は、3年目のシーズンが始まって早々、日本人4人目の12秒台をマークする。そして、12秒台が5人(当時)も名を連ねた日本選手権では、2年連続して3位に入り、その後、世界選手権に出場を果たした。群雄割拠の女子100mハードルにおいて田中は精彩を放っている。
── 昨年の日本選手権は12秒台の選手が5人もいました。12秒台で走っても、世界選手権の日本代表が保証されているわけではありませんでした。どんな心境で臨まれましたか。
「緊張しました。今思うと、『よく生き抜いたな』と思うぐらいです(笑)。決勝のレース前は『音が鳴ったら出る』『落ち着いて走る』『あとはやるだけ』などと口に出して、自分を鼓舞しながらレースに向かいました」
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