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相澤晃は大学時代の箱根駅伝への取り組みが大切と再確認 パリ五輪出場へ「陸上って難しい」 (3ページ目)

  • 牧野 豊⚫︎取材・文 text by Makino Yutaka

【パリ五輪は1万m、そしてその先へ】

――2024年のパリ五輪に向けて、どのような部分を中心に鍛えていきますか。

「僕自身の根本にあるのは、やっぱりスタミナなんですよね。自分が変わるきっかけとなった大学時代にやっていたような原点、そこを疎かにしちゃいけないという考え方に戻りました」

――具体的にはどういうことですか。

「2022年はスピードを意識した練習を結構やっていましたが、2023年はほぼやらずに、それでも日本選手権ではあのタイム(自己ベスト)を出せた。そういう意味では陸上って難しいなと感じる部分もあるのですが、1万mなら大学時代のように箱根駅伝(ロード)に向けた取り組みが大切であることを再確認したということです」

――近年は5000mを軸にスピードを意識した取り組みをする選手が多いです。

「日本のトップクラスの選手は、おおよそ5000m寄りの1万mという捉え方ですが、僕はマラソン寄りの1万mという考え方です。スピードが大切だと言っても、実際に世界陸上やオリンピックのラスト1周で日本人選手は残れていない現実があります。それだけ長い距離で勝負するためのベースとなるスタミナが足りないからです。はっきり言えば絶対値を上げるためにすべてをやらなければならないのですが、走練習で補えなければ、ウエイトトレーニングやバイクトレーニングを加えて強化していく、という考え方です。

 パリ五輪後はマラソン挑戦を視野に入れているので、ピークを絞っていければと考えています」

――マラソンについては、すでに準備に入っている部分もありますか。

「東京の世界陸上(2025年)はマラソンで出たいという気持ちが強いので、2023年はケガから復帰した後も40km走とか、8月に3本ぐらい走って感覚を作ったりしていました。ただ、僕の場合、トラックとマラソンはうまく混ぜながら取り組んでいく方が成長できる感覚があると思います」

――ちょっと気が早いですが、初マラソンは2024年の年末、それとも年明けくらいを目安にしていますか。

「まだわかりませんが、年明けのほうが現実的かと考えています。一方でオリンピックが終わった後の秋口に1本、トラックレースに出たいイメージも持っています」

――2024年は1万mでパリ五輪を狙いますが、5月の日本選手権以外にポイント制の世界ランキングでの出場も視野に入れて、他に海外含めてレースに出場する計画はありますか。

「僕は、5月の日本選手権に照準を合わせていきます。今回(12月)の日本選手権も100%の力を出し切りましたし、仮に3月、4月に記録(パリ五輪参加標準記録を前提にした26分台)を狙うレースに出るのは、現実的ではないと考えています。

 もっともオリンピック出場を目指すので5月の結果によってまた対応は変わるかもしれませんが、まずは日本選手権に準備して100%の力を出しきれるよう、ひとつずつやるべきことに取り組んでいきます」

前編〉〉〉相澤晃インタビュー

【プロフィール】相澤晃(あいざわ・あきら)/1997年7月18日生まれ、福島県出身。学法石川高(福島)→東洋大。高校時代は貧血などに悩まされインターハイ出場はなかったが、大学入学後は食事の改善等もあり、その潜在能力を発揮。2年時以降は特に学生3大駅伝でその存在感を見せつけ、出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝すべてで区間新記録を樹立。2020年箱根駅伝2区では史上初の1時間5分台(57秒)となる区間新記録を樹立した(今も歴代2位、日本人歴代最高)。卒業後は旭化成に進み、トラック1万mで日本記録更新、日本選手権優勝2回(2020年、22年)、2021年東京五輪出場(17位)を果たしている。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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