相澤晃は大学時代の箱根駅伝への取り組みが大切と再確認 パリ五輪出場へ「陸上って難しい」 (2ページ目)
【自分自身の欲と果たすべき役割】
――今回、相澤選手としては長いブランクを経ての好走でしたが、一歩引くと、1万mもマラソンも、2023年は日本が少しずつ縮めてきた世界との差がまた開いた印象も受けます。1万mについてはパリ五輪の参加標準記録が27分00秒00と2023年のブダペスト世界陸上から10秒も縮まりましたが、26分台についてはどのように捉えていますか。
「近い将来、26分台は日本でも行けるかなと感じています。と同時に、5000mの通過を13分40秒で行くのと13分30秒で行くのは全く違います。僕は楽観的な人間ではあるんですけど、そういう競技面のアプローチについては楽観的ではなく、現実を見つめながらやっていく必要があると思います。だからといって、達成できないかと言われたらそうは思わない。
絶対追っていかなくちゃいけない記録ですしそういう姿を僕たちが見せることによって、今後出てくるような小学生、中高校生など、これからの日本を背負う選手たちが目指せるようなレースをしなければと思っています」
――陸上界全体のことも考える年齢を迎えている。
「僕たちが今、一時的に速い選手として(国内トップクラスに)いても、世界を目指さなければ日本の陸上界はうまくいかなくなってしまう。
瀬古(利彦)さんや宗(猛、茂の兄弟)さんたちが1980年代にマラソンで築いてきたものがあり、今は大迫さん(傑、Nike)がしっかり作ってくれた流れを僕たちがつなげていかなくてはならないと思います。
もちろん自分のことが最優先なんですけど、将来のことも考え、自分の役割みたいなものを理解しなければと最近は思います」
――大迫選手も近年は常々、"自分のために走っている、その結果として多くの人に喜んでもらえれば"というスタンスを強調しています。要はなんでも、人のために取り組む、すべてはオリンピックのためになりがちな傾向に対して順番が違うということですよね。女子の新谷仁美選手(積水化学)は大迫選手とは異なる思考でオリンピックを特別視していません。
「言葉にするのは難しいのですが、僕も自分の欲求のために走っているところがあります。もちろん人のために走ることも大事だけど、やっぱり欲がなくなったら、成長できないと思います。それって、勉強や仕事でも同じだと思いますし、プロのアスリートでも、実業団のアスリートでも、お金という対価を求めることも当然のことだと思います。
僕自身はオリンピックを目指していますが、新谷さんのように考える方がいてもいいと思います。オリンピックは1国3名までしか出られませんので、国籍に関係なく強者が集うマラソンのワールドメジャーズ(東京マラソンを含め1年に6大会)、トラック競技ではダイヤモンドリーグに勝つほうがアスリートの欲求を満たすという見方もできるからです。
確かに大迫さんや新谷さんは少し独特な部分はあると思いますが(笑)、共感できる部分はあります」
2 / 3