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苦難の社会人1年目を乗り越えた横田俊吾「勝負はラストに待っている」マラソン日本学生記録を引っ提げてMGCへ (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロスポーツ

【パリもロスも狙えるものはすべて狙っていきたい】

 4年前のMGCの時は、部の仲間と一緒に青学大の先輩の応援にいった。藤川拓也(現中国電力)、神野大地(現セルソース)、橋本崚(現中央発條)らが出走していたが、年代的に誰ともかぶっておらず、全然知らない先輩を必死に応援した。レースは最後、服部勇馬(現トヨタ自動車)が大迫傑(NIKE)をかわしたシーンが印象的だった。

 今回のレースも「勝負はラスト」と横田は考えている。

MGCは、最後に1番になればいいので、それまでの道中はどうでもいいわけじゃないですけど、何もせずにおとなしく走っていればいいかなと。最後、自分が勝てると思ったタイミングでスパッと前に出て、勝負できれば結果が出ると思います」

 そのMGCには前回、応援していた青学大の先輩たちや同じJR東日本の其田健也らチームメイトが出走する。

「どちらにも負けたくないですね。全員がライバルですし、負けたら五輪に出られないですから」

 負けず嫌いで、気の強さが言葉からもうかがえる。中学の時から常に強い場所で自分を磨きたい、強くなりたいと向上心をもって陸上をしてきただけに、それと比例するように負けず嫌いのアベレージがどんどん上がっていった。だが、冷静に考えると横田は、まだ社会人1年目、MGC3度目のマラソンとレース経験はまだ浅い。年齢的には次のロス五輪も狙えるところにある。

「いや、年齢的にとか、次の五輪とか関係ないです。出られるなら全部に出たいですし、チャンスがあるならそれを目指して狙っていきます。そういう姿勢を僕は大事にしているので」

 狙えるものは獲りに行く。野心と貪欲さを見せる横田だが、その視線の先には、果たすべき夢がある。

「日本代表のユニフォームを着て、五輪や世陸でフルマラソンに出場することが夢です。そのためには、日本国内のレースを勝ち抜くことが目標になります。MGCは、まさのそのレース。僕にはまだマラソンの経験が足りないですが、それを練習で補って勝負したい。箱根の時に感じたんですけど、レースでは応援が走る際のエネルギーになります。MGCでも普通に応援していただけたらうれしいですし、僕も応援しがいのあるレースを繰り広げられるように頑張って走りたいと思います」

 箱根駅伝から10か月、あの時のように応援の声を再び力に変えて勝負に臨む。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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