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苦難の社会人1年目を乗り越えた横田俊吾「勝負はラストに待っている」マラソン日本学生記録を引っ提げてMGCへ (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロスポーツ

【出来すぎた......男子マラソン日本学生記録に】

 2023年2月、2度目の別府大分毎日マラソンの目標は、前年が30キロで落ちたので最後まで先頭集団についていくこと。1015日に行なわれるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ/パリ五輪マラソン日本代表選考競技会)出場権を獲得すること、だった。

 スタート前、横田はあるレースプランを実行しようと考えていた・

「ある人に、『前半は隠れて目立たないように走り、中盤から少しずつ上がっていき、いつの間にかテレビの画面に映っているぐらいの感じでいくと後半も伸びる』と言われたんです。最初は『そうだな』っていうぐらいにしか考えていなかったんですけど、実際のレースがそういう感じで展開していったんです。おもしろいなぁって思いましたね(笑)」

 スタートしてから先頭集団の中で息をひそめ、力を使わずに走った。30キロ過ぎに一度、集団から落ちそうになるも踏ん張って、そこからは落ちてくる選手を回収して、いつの間にか市山翼(サンベルクス)と日本人のトップ争いを演じていた。

「落ちそうで落ちなかったですね(笑)。僕の場合、大学で距離を踏む練習が多くて、マラソンへの移行がスムーズにできていました。途中で落ちずに粘っていけたのは、やっぱり4年間の練習の賜物だなって思いました」

 横田は、最後まで先頭集団でレースを進めた。スタート時は8分台のタイムを想定したが、途中からは「それ以上いけるかも」と思ったという。結果は、横田の読み通り、8分台を切り、2時間747秒で総合4位、日本人2位、学生男子マラソン日本記録を更新した。日本人トップの市山とはわずか3秒差だった。

「このタイムは出来すぎですね。僕の中では7分台なんて見てもいなかったので」

 横田は、少し照れたような笑みを浮かべて、そう言った。

 マラソンの学生記録を引っ提げてJR東日本に入り、MGCに向けてトレーニングを積み重ねていった。しかし、トラックシーズン、横田が出場したレースは、610日の日体大長距離競技会の5000mのみだった。自身の存在を表舞台から消していたが、実は7月のホクレンディスタンス前に故障してしまったという。

「大学の時もそうだったんですけど、1年目ってなかなかうまくいかないんです。社会人1年目もそうで、自分でも表舞台から姿を消しているなぁという自覚がありました(苦笑)。もう故障は治って、今はポイント練習ができていますので、MGCが楽しみです」

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