MGC男子の上位ふたりは誰か? 鈴木健吾、大迫傑、山下一貴ら注目選手を脅かす存在も多数 (2ページ目)
【「不気味な存在」「要注意選手」とは】
日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)は、今回の優勝候補のひとりだ。
2021年2月、びわ湖大分毎日マラソンで、2時間4分56秒の日本記録を出した時の走りは圧巻だった。35キロから40キロで14分39秒と最速ラップを叩き出し、ラスト2.195キロは6分16秒で駆け抜けた。後半、ペースを一気に上げるスタイルは翌22年の東京マラソンでも健在で、2時間5分28秒の日本歴代2位の走りで日本人トップ、4位入賞を果たした。その後、新型コロナに罹患し、オレゴン世界陸上のマラソン出走を断念。故障などもあり、今年6月の函館マラソンが東京マラソン以来、1年3か月ぶりの復帰レースになった。
前回のMGCは「集団の中で様子をうかがって最後に勝負する戦いだったので、勝ちにいく試合ではなかった」という。21年に今回のMGC女子にも出場する一山麻緒(資生堂)と結婚してからは、夫婦でパリ五輪を目指してやってきた。鈴木は「いい練習ができれば勝負に絡めるので、スタートに立つまでの自分との戦いがポイントになります」と日本記録を出した時と同じことを語っていたが、今回のMGCは勝ちにいくレースだけに気持ちが違う。あの時のように圧巻の走りが見られるかもしれない。
また、多くの選手が「要注意選手」と名を挙げていたのが、西山雄介(トヨタ自動車)だ。
駒澤大時代は1年時より4年間、開催中止になった出雲駅伝以外、箱根駅伝などすべての駅伝に出走した。昨年2月、マラソンのデビュー戦となった別府大分毎日マラソンでは2時間7分47秒の大会新記録で初優勝。西山の強さは、ブレないメンタルだろう。トヨタ自動車入社から初マラソンまで5年を要したが、その間、駒澤大同期の大塚祥平(九電工)らが結果を出していく中、「自分の取り組みがブレてはいけない」と、4年目に10000mで27分台(27分56秒78)を出した後、満を持してマラソンに移行した。
昨年は、オレゴン世界陸上(13位)を走り、「100mでペースが変わる」世界トップの凄さを経験し、どんな状況にも対応できる力が勝つためには必要だと痛感した。それ以降、西山はマラソンを走らず、黙々と練習を積み、最後に出場したレースは7月ホクレン深川大会の10000m(28分39秒10)。潜伏期間が長かったゆえに他選手から不気味な存在と警戒されている。「パリ五輪しか考えていない。その先のことは考えていない」というほど、パリ五輪にかける気持ちが強いだけに相当の覚悟を持って臨んでくるだろう。
面白い存在なのが、赤﨑暁(九電工)だ。
拓殖大では、4年連続で箱根駅伝に出走し、4年時にはキャプテンとしてチームを牽引した。九電工に入社したのは2020年だが、初マラソンは2022年2月の別府大分毎日マラソンで2時間9分17秒、同年12月の福岡国際マラソンでは2時間9分1秒で総合8位となり、MGC出場権を得た。赤﨑の持ち味はスピード(スプリント)だ。7月のホクレンディスタンス千歳大会の5000mで三浦龍司(順天堂大)をラストで差してトップでフィニッシュした。
今年はスピードを強化してきており、ホクレン網走大会の5000mで13分27秒79の自己ベストを出した。「このスピードがマラソンにうまくハマって、ラストで先頭集団にいたら面白いレースができると思います」と語るが、課題の35キロ以降のペースアップが可能になれば、最後に伝家の宝刀のスピードが活きてくる。
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