箱根駅伝2年連続シード落ちの東海大は復活なるか エースの「練習に誰もついてこない」発言からチームは変わりはじめた (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 長田洋平/アフロスポーツ

【エース石原翔太郎を中心に、練習に変化が生まれた】

 練習でも大きな変化が起きている。

 昨年、石原はひとりで練習していたが、新チームになってからは石原のグループが生まれ、そこで練習することが増えたという。実際、今回の予選会の際もエントリーメンバーに加え、野島健太(3年)らが参加して、石原と練習をこなしてきた。

 ただ、これは、両角監督は一切ふれていないし、強制もしていない。「選手たちが自主的に行なっている」(両角監督)という。

「朝夕と練習すると週14回の練習になります。ただ、フリーの日や練習のない日もあるので、10回が練習になります。そのうち5回はポイントを含めた集団練習になりますが、残り5回は自由にジョグさせているんですよ。でも、回数的にこの5回が大きい。強くなるためには、ここをどう工夫するのか、そこをどう過ごすのかで変わってくる。ただ、自分ひとりでやろうとするときついので仲間同士で誘ってはじめたのが、石原を軸としたグループになったんです」(両角監督)

 グループで練習することで「走力が上がり、個々の意識がより高まった」と両角監督は言う。

「石原が入ると、とてつもない速さでいってしまうので、そこについていくのは大変ですよ。でも、彼がいなくなったら今後、どうなるのか。『今のうちに石原さんに挑戦して、何かしら得ておかないと』と思う選手が参加しています」

 石原のさじ加減で練習の強度が異なるだけに、持ち前のスピードで引っ張る時は全員が必死についていこうとするし、いかない時は、「今日、石原さんがいかなくて平和だったなぁ」と選手のホッとしたような声が漏れてくるという。いずれにせよ、この石原軍団とも言えるグループでは、かなり質の高い練習ができている。

 花岡は、石原のそばで走れるのを大きなチャンスと捉えている。

「石原さんは本当に強いですし、今日も『何、緊張してんだ?』と声をかけられたんですけど、石原さんはまったく緊張していなくて、本当に心強いなって思いました。そういう先輩のもとで走れるのも今季しかないので、できるだけついて練習していきたいと思っています」

 永本も「ふだんはAチームで練習させてもらっていますが、石原さん、花岡さんの練習の姿勢とか考え方とか、見習って力をつけていきたい」と大きな刺激を受けているようだ。

 駒澤大が田澤廉(現トヨタ自動車)、中央大が吉居大和(4年)を軸にグループを作って、選手強化に成功してきたように、東海大もようやく石原を軸にその流れができてきた。しかも自発的な発生だ。自主性が促進されていくことで、選手の目標達成のための取り組みや自己分析が進み、より具体的な強化につながっていく。実際、今回、水野が2組で日本人トップの2位を勝ちとったり、永本が快走するなど、効果は見え始めている。

「水野はよく頑張りましたし、本当によくなりました。永本は、入ってきた時は故障していたんです。だから今回の予選会はきついかなと思っていましたし、関東インカレも出さなかったんです。デビューは秋かなと思っていたら、意外といい感じで回復しましたね。粘れる選手なので、こういうレースで使いたいですし、駅伝で強さを発揮するタイプだと思います」

 両角監督は、成長を続けるふたりの快走に笑みを浮かべた。

 石原は、チーム練習に手応えを感じているようだ。

「みんな、練習でラストスパートだったり、僕についてきたりすることを意識しはじめたので、成長していると思います。実際、今回はみんな、外すことが少なかったので意識が高くなっているのかなと思いますね」

 石原が望んでいたことが、徐々にだが実現できている。それが石原自身のモチベーションになっているようで、ここまでケガもなく、順調にきている。

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