優勝候補のはずがまさかの最下位...井上大仁はMGCで前回のリベンジを狙う「ネガティブな気持ちが少しでもあると一気に崩れてしまう」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 築田 純/アフロスポーツ

 井上がターゲットにした次のマラソンは、2017年2月の東京マラソンだった。「うまくハマった」というレースは、ハイペースのなか、10キロ程度しか先頭グループについていけなかったが、それでも粘り強い走りで、いい感触を得て走りきることができた。そして2時間8分22秒で日本人トップとなり、ロンドン世界陸上のマラソン代表の切符を得た。

 しかし、本番は「ふるわない走り」で終わり、「このままではダメだ」という危機感を抱いて井上はロンドンから帰国した。ここから発奮して練習した成果がジャカルタのアジア大会男子マラソンの優勝につながるのだが、井上が目指していたのはあくまでも世界だった。

 世界と戦うために東京五輪出場を目標に掲げたが、それには2019年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で勝ち抜かなくてはならない。そのレースで井上は優勝候補のひとりとして名前が挙げられていたが、結果は27位(最下位)の惨敗に終わった。

「アジア大会は、優勝だけを目指して集中して練習に打ち込んでいけたんですけど、MGCの時は練習が一杯一杯の状態で、気持ち的にも消耗していました。調子が上ってこないなか、もうガタガタの状態でしたね。ネガティブな気持ちとか、周囲に飲まれる感覚が少しでもあると一気に崩れていくんだなっていうのを実感しました。そういう自分を受け止めることができなかったことが、あそこまで嚙み合わずに終わってしまった原因だと思っています」

 MGCの惨敗から1週間ほど休養し、井上は気持ちを切り替えた。東京五輪マラソン男子代表の最後の切符をかけて、2020年東京マラソンに臨んだ井上は、高速レースに身を投げる覚悟で積極的に行くことを決意。序盤から外国人選手が形成する先頭集団のなかで唯一の日本人選手となり、果敢に攻めた。その後も日本人トップで走り続けたが、32キロ地点で大迫傑につかまり、最後はオールアウトして26位に終わった。

「この時、海外選手との差がすごく大きく、その差を埋めていくためにはまとめるレースではなく、ハイペースで行ける距離とか、挑戦できる長さとかを可能な限り伸ばしていくしかないという気持ちで走りました。それで最後は止まってしまったんですけど、悔いはなかったです」

 この時、日本記録更新で、東京五輪の切符を射止めた大迫は強かったと実感した。

「大迫さんは、MGCで負けた瞬間から五輪に出るためには勝たないといけない相手になりましたし、雲の上とか憧れとか言っている場合じゃないと思っていました。この時も本当に勝つべき相手として意識していたのですが、負けてしまって......。大迫さんは、今も正直言って相当意識しています」

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