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「世界を目指すというのが恥ずかしく思えてきた」マラソン吉田祐也は大迫傑の練習に衝撃「質と量がケタ違い」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 西村尚己/アフロスポーツ

「福岡国際で優勝したあと、心のなかではこれで世界を目指せるなって思っていたんです。でも、大迫さんと合宿していると、もう全然ダメじゃんって感じになっていったんです。大迫さんの東京五輪前も一緒に練習をさせていただいたんですけど、もう全然歯が立たないんです。80%ぐらいに落としてもできない。箱根駅伝や福岡国際で優勝して、知名度が上がって応援してくれる人が増えたんですけど、そこで満足している自分のメンタリティも練習量も全然もダメ。世界を目指すというのがすごく恥ずかしく思えてきました」

 吉田が大迫と合宿を積み重ねていくなかで、一番衝撃を受けたのは、練習量だった。

「もうケタ違いというか、量も質も全然ちがう。大迫さんはナイキ・オレゴン・プロジェクトで、モハメド・ファラーやゲーレン・ラップら世界のトップクラスの選手と練習し、修羅場をくぐり抜けてきた人なので当然と言えば当然なんですよ。大迫さんって、世間のイメージではスマートに練習をこなしているように見られているじゃないですか。でも、世界で一番ぐらい泥臭く、めちゃくちゃ練習をしているんです。その姿を僕に見せてくれているんですけど、世界ってこんなに遠いのかって落ち込んでしまいます」

 今、吉田は大迫と彼のコーチであるピート・ジュリアンのふたりから指導を受けている。ケニアなどで合宿しているが、大迫との距離はなかなか縮まらない。

「今も、練習をやる度に立ち直れないぐらい心が折れます。でも、心が折れても一歩一歩、継続してやっていくしかないんです。僕の年齢では、もう爆発的に強くなることはないので、できることをコツコツとやっていく。大迫さんとピートからも『1回の練習や合宿で強くなることはない。継続して、2、3年かけてようやく強くなるものなので、我慢してやっていくしかない』と言われていますし、『トレーニングは競争じゃない。誰かと比較する必要はなく、自分がどうだったのかを常に考えるべき』と言われます。だから、自分の気持ちを落ち着かせてトレーニングを継続しています」

 東京五輪前、大迫と練習をこなしていた吉田だったが、五輪本番のレースはテレビで見ていた。あれだけの練習をこなしてきた大迫ならメダルにも手が届くのではないかという期待をもっていた。しかし、世界はそんな大迫の前を走っていった。

「テレビを見ていて、あれだけやってきた大迫さんでも6位なのかって愕然としました。世界のトップは壁が厚いなと改めて思いましたね。キプチョゲを始め、彼らがどういう練習をしているのかわからないですけど、いとも簡単にペースを上下させているのを見ていると、これからどれだけ頑張ったら追いつくんだろう、本当に追いつけるのかなと絶望的になりました」

 だが、東京五輪での大迫の走りを見て、ポジティブに捉えられることもあった。

「大迫さんと練習を続けていければ、世界の6番になれる可能性がある。どんなレース環境であっても、これまでのことを継続してやれていれば安定して世界と戦えるっていうのを大迫さんが証明してくれました。僕は、今の取り組みを続けて、どの舞台になるかわからないですけど、世界と戦いたい。それがパリの舞台になればという思いはあります」

 2024年にパリ五輪が開催される。五輪は吉田にとって、どういう位置づけになるのだろうか。

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