マラソン西山雄介が「テレビで見るだけではわからない」と痛感した世界との差「100mごとにペースの変化がありました」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 長田洋平/アフロスポーツ

【MGC、パリ五輪への覚悟】

 MGCを越えると、次はパリ五輪になる。テレビで東京五輪を見ていて、自分もあの舞台に立ってレースをしたいという思いで、これまで努力を継続してきている。大きな目標を立てるとブレないという性格の西山なら東京五輪での大迫傑以上の何かを見せてくれる可能性がある。

「五輪は、自分の競技人生で一番の目標ですし、今はパリ五輪しか見ていない。正直、その先のことは一切考えていなくて、パリ五輪で出しきる、やりきることしか考えていません。それを終えたあと、次に新たな目標ができるのか、それともそのまま終わってしまうのか......自分には想像がつかないですが、まずは覚悟をもってパリを目指していきます」

 MGCで勝利し、パリ五輪への出場権を獲得しても戦いは終わらず、むしろよりハイレベルの戦いが待っている。オレゴンで違いを痛感させられた強豪たちと戦うことになるのだ。

「ケニア、エチオピアがすごいですけど、全員が全員、本番に100%でくるわけじゃないですし、気象条件とかでいろいろ変化が出てくると思います。アフリカ勢が強いとか、そういう考えは取っ払って、勝負に集中してやっていきたいですね」

 昨年11月、第一子が生まれ、家族の存在が気持ちの切り替えの場になり、競技にもプラスに働いている。アスリートのなかには、自分が何をしているのか、子どもがわかる年齢まで続けていたいという願望を持つ人も多い。西山はパリ五輪しか見ていないが、そこで自分が納得できる最高のレースができれば、映像にも人々の記憶にも残り、自慢のパパになれるはずだ。

【筆者プロフィール】佐藤 俊(さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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