マラソン西山雄介が「テレビで見るだけではわからない」と痛感した世界との差
「100mごとにペースの変化がありました」 (2ページ目)
【肌で感じた世界の壁】
「もうベースが全然違うなというのを痛感させられました。勝負どころだととらえていた30キロ過ぎで簡単に離されてしまったので、本当に悔しかったですね。東京五輪のマラソンを見て、自分だったらと置き換えて世界で走ることをイメージしていたのですが、想像していたものと現実に体感したものとでは、すごいギャップを感じました」
西山は、オレゴンでのレースで、テレビで見るだけではわからなかったものをたくさん感じた。それは、その場にいないとわからない世界の走りのすごさだった。
「何が一番ギャップやすごさを感じたのかと言うと、ペースの上げ下げです。ラップを見ていくと1キロごとの変化があるんですけど、走っている感覚としては100mごとに動いている感じなんです。こんなに動くんだというぐらい変化しているんですよ。でも、それって言葉じゃ伝わらない。あとでトヨタの選手と話す機会があったんですけど、100mごとにペースの変化がありましたと言ってもピンときている人がいなかったですからね。あれは経験しないとわからない。この世陸での経験はパリ五輪で活かしていきたいなって思っています」
だが、そのペースの上下に対応する前に、やるべきことはまだ多いようだ。
「ペースに対応すればよいというわけじゃないです。世界のトップとは、そもそも根本的にスピードが違います。そのスピードに対応できるようになってからペース変化の課題に取り組めるという感じです。同時に、それに耐える中間走だったり、本当に足りないものをあげたらきりがない。全部はとても潰せないので、自分の長所を活かして勝負できるようにしたいと思っています」
世界に向けて何をすべきかは明確になっている。だが、その世界に飛び出す前に、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)という大きな山が待っている。そこで2位以内に入れば、パリ五輪で再び世界と対峙できるチャンスを得る。MGCについては、どういう印象を抱いているのだろうか。
「MGCはペーサーがいないガチンコレースで、見ていておもしろいですよね。選手からしてもいろんな駆け引きや要素が求められるのでおもしろい。選考としてもわかりやすいですし、MGCは他のマラソンと違う特別感が自分のなかにあります」
前回のMGCは設楽悠太(ホンダ)が飛び出し、予想しない展開が起きた。多くの選手はペーサーがいないだけに展開が読めないと語るが、西山は、どう考えているのだろうか。
「MGCは、自分も読めないです。だから、スロー、ハイペースなどどんな展開になっても対応できるように、すべてのパターンをイメージしながら練習に取り組んでいます。強い選手ばかりなので、いざ勝負となるとメンタルも要求されると思うので、そういうところも含めて、すべてに強さが求められるかなと思いますね」
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