駒澤大一強なのか。全日本駅伝で見えた箱根駅伝の優勝候補校とダークホース校は? (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 和田悟志●撮影photo by Wada Satoshi

山の区間で勝負したい青学大

 連勝街道をひた走る駒澤大を止めるのは、青学大だろう。

 今シーズン、出雲は4位、全日本は3位と駅伝で力を十分に発揮できていない。駒澤大との最大の差は、今回の全日本では2区と8区とブレーキ区間が出てしまったことだ。全日本の2区白石光星(2年)の起用は直前の練習では非常に調子がよく、好調を維持していたことでの判断だった。だが、調子がよいせいか体が軽くなりすぎてしまい、調整に失敗した。それを見極めるのは難しいが、原晋監督のすごさは、まさにその細かい部分を見抜くところだったはずだ。その選手のコンディションを見極める眼が機能し、主力に故障者が出なければ駒澤大を倒す力は十分に保持している。

 これは、タラレバになるが、全日本で8区のアンカーの宮坂大器(4年)に襷が渡った時点でトップの駒澤大とは2分27秒差だった。ブレーキになった2区で2分以上遅れたので、そこを普通に走っていれば少なくとも駒澤大とアンカー勝負にまでもっていけた。3区から7区までは青学大らしい巻き返しを見せ、2区で13位にまで落ちた順位を3位にまで戻せたのは、底力がある証拠。近藤幸太郎(4年)が田澤に一目置かれる存在となり、エースの風格を漂わせ、横田俊吾(4年)は全日本4区2位、中村唯翔(4年)が6区3位、佐藤一世(3年)は全日本3区2位と好調だ。また、今回入れ替えになった西久保遼(4年)、出雲で悔しさを味わった志貴勇斗(3年)、田中悠登(2年)、さらに若林宏樹(2年)、太田蒼生(2年)らもいる。

「山の上りの5区と下りの6区には自信があります。箱根では勝ちにいきます」

 原監督はそう宣言しているが、駒澤大の唯一の懸念である山で差を詰める、あるいは広げ、先行する展開になれば青学大の2連覇が見えてくるだろう。

ダークホースは國學院大か

 優勝を争う2チームに食い込んできそうなのが、國學院大だ。

 出雲では最終区の6区で2位、全日本でもアンカーの伊地知賢造(3年)が猛烈なまくりを見せて青学大を抜き、昨年の4位を超えるチーム史上最高位の2位に入った。

 全日本は1区17位と出遅れたが、すぐさま2区の山本歩夢(2年)で取り返し、7位にまで順位を上げた。5区の青木瑠郁(1年)が区間賞を獲る走りで2位に上がり、6区で3位になったが、最終的に2位を確保した。主将の中西大翔(4年)、伊地知、平林清澄(2年)、山本の4本柱が中心だが、大幅な出遅れを他選手がカバーして順位を押し上げていけるのは個々の選手の力が非常に強いのと同時に、チームに勢いがあるという証拠でもある。

 國學院大は浦野雄平(現富士通)・土方英和(現Honda)の強い世代が卒業したあと、前田康弘監督は平林らが4年になった時、箱根で優勝を争えるチームにしていきたいと語っていた。ところが昨年からその芽がすでに開花しつつあり、今シーズンは駒澤大と青学大の間に割って入る力をつけている。ただ、箱根は全10区間、20キロを走れる選手を揃えたうえで5区6区のような坂道の区間もある。「駒澤大さんは、エベレストのような大きな山です」と、前田監督は打倒・駒澤大に向けては慎重だ。だが、出雲、全日本を走ったメンバーに加え、鶴元太(2年)、沖縄出身の1年生コンビ上原琉翔と嘉数純平ら中間層の選手の状態が上がってくると2強を食う一番手になるだろう。

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