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「自分のマラソンがわからなかった」と明かす福士加代子が、後輩ランナーに贈る言葉「自分にもっと期待感を持って」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

これからの女子長距離について

――そんな福士さんに、今の女子長距離はどう見えていますか?

「トラックはレベルが上がっているし、田中希実選手(豊田自動織機)のように1500mから1万mまでやる選手が出てきたのは面白いですね。『私は1500mだから1万mは走らない』とどこかで決めている部分もあったし、そういう決め事をなくして、風通しをよくしたほうがいい。それに彼女は『マラソンをやったらハマっちゃいそうで怖い』と話していたけど、多分、ハマると思いますよ(笑)。

 ただ、マラソンは誰にでも伸びしろのある種目だと思います。トラックはスピードや技術がいるけれど、それは感覚的にできる子とできない子がいて、教えても難しい部分があります。でもマラソンは、その人それぞれにいろんなやり方、走り方があるから、いろいろ試せると思いますね」

――マラソンも、ワコールの後輩だった一山麻緒選手(現・資生堂)や、松田瑞生選手(ダイハツ)などが、2時間19分台の可能性が見えてきていますね。

「そうですね。ただ、今は記録の伸びが少し止まっているからもう一段階、違う風も必要かと思います。もっとのびのびとした考えで、ゆとりを持ってマラソンに取り組んでもいいのではないかと思います。海外では子供のいる選手や、30代になってもすごい記録で走っている選手も多いので、そのような余裕を持ってもいいのかなと。

 あとは日本女子マラソンの傾向として、このくらいで走ろうみたいに抑えて、ペースにハメようとする選手が多いのかなと思うので、楽だからスピードを上げちゃおうという走りをしてみてもいいと思います」

―― 一山、松田両選手に次ぐ選手たちはもうひとつ記録を伸ばせないでいますが、失敗を恐れているようなところもあるんでしょうか。

「多分、結果が見えてしまっているんじゃないですか。『こうやればこうなる』って。でも、『そうじゃなかったら、こうなるかもしれない』と、自分への期待感をもっと持ってほしいですね。痛い思いをすることもあるけど、それも面白いし、自分の最低限を経験すれば『これ以下はないな』とも思えますから。

 だからそのレベルの選手たちは1回、みんなで同じ練習をしてみても面白いんじゃないですか。いい刺激にもなるだろうし、一緒だと意外と楽に走れるんじゃないかとも思うんですよね」

――将来は指導者にもなると思いますが、そういう新しい企画を提案してやってみるのも面白そうですね。

「できますかね。私は指導というのをしたことがないし、自分自身も文句しか言ってなかったので『指導って何?』という感じで(笑)。だから、チームでアドバイザーをやりながら、習っているところなんです。

 今は講演やマラソン大会のゲストランナーが多いけど、香川県の女木島で、何もないところからマラソン大会を作ろうというのを計画しているんです。そこは鬼ヶ島の愛称で親しまれている島なので、きび団子を配ってもいいかなって(笑)。遊び感覚で友達を増やせるような大会ができたら面白いなと思いますね。自分が楽しく走っていた気持ちをたくさんの人に経験してほしいなと思っています」

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