箱根駅伝、青学大の区間配置の妙。原監督が選手起用の極意を詳細に明かす

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

 第96回箱根駅伝で実感させられたのは、2年ぶり5回目の優勝を果たした青学大・原晋監督の攻めの区間配置の巧さだった。

 区間配置への考えを原監督はこう話す。

2年ぶりの総合優勝を果たし青学大。10区は2年の湯原慶吾が走った2年ぶりの総合優勝を果たし青学大。10区は2年の湯原慶吾が走った「そもそも私の場合は、選手の能力と適性を見て配置しているので、必ずしも『強いから2区』というのはなくて、2区に適性を持つ強い選手、1区に対応できる強い選手という形ではめ込んでいった結果が今回の10区間です。大げさに言えば、365日間毎日どうメンバーを組むかという視点で常にシミュレーションしているし、自分の大学だけではなくライバル校の誰々が来た時にはどうするか。何10秒勝つか、負けるか、というシミュレーションを繰り返しているんです」

 今回、区間エントリー時のサプライズは、2区に1年の岸本大紀を置いたことだった。出雲駅伝では2区で区間1位、全日本大学駅伝は2区で区間5位と安定した結果を残し、11月に走った1万mでも28分32秒33の自己新は出していたものの、まだ実績はさほどない選手。最初にエントリーを見たときは、ダミーかとも思ったが、その後の原監督のコメントから、本気で配置したのだと感じた。

 1区は当日変更で1年生の宮坂大器から、前回9区で区間1位のエース・吉田圭太(3年)にしたが、それは東京国際大がイエゴン・ヴィンセント(1年)を控えにしていて、当日の1区の可能性も考えての対策だった。

「1区に吉田圭太を持っていくことによって、絶対に先頭から大きく遅れることはない状態を作り出せた。東京国際大が外国人選手を使ってきたら、それに対応できるのはうちには吉田しかいない。彼なら100m以内の差で99.9%来てくれると考えました。そのうえで、2区はその差を埋めるべき対応力があるのは誰か、と考えると岸本しかいなかった。最初に突っ込んでいける能力と、後半の二度のアップダウンに対応できる能力を持つのは1年生ではあるが、岸本しかいないと踏んでいたので、そこはピタリと当たりました」

 さらにライバル校を考えれば、東洋大は2区にエースである相澤晃(4年)で来ると踏んでいた。1区は西山和弥(3年)で来たが、「彼の場合は今年、調子が悪い。30秒から1分は遅れるだろうと踏んでいた」と言う。

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