2020.01.07

最後の箱根で東海大・館澤亨次が魂の走り。
主将を勇気づけた黄金世代の絆

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Matsuo/AFLO SPORT

東海大・駅伝戦記 第78回

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「館澤が本当にすごい走りをしてくれて……すごくうれしかったです」

 箱根駅伝で総合2位に終わったあと、西川雄一朗(4年)は涙をぬぐいながらそう話した。

 西川は副キャプテンとして、主将の館澤亨次(4年)がケガで離脱している間、チームを支えてきた。ストイックな性格で自分にも他人にも厳しく、両角速監督からも絶大な信頼を寄せられていた。

 前回と同じ3区を任された西川は「昨年以上のタイムを出し、優勝に貢献する」と心に決めて臨み、前回よりも40秒も縮めたが、それ以上の走りをする選手が続出し、結果的にトップに大きく引き離されてしまった。往路が終わり、トップの青学大に3分22秒差をつけられたことに責任を感じた西川は、悔し涙を見せて頭を下げた。

箱根駅伝6区で57分17秒の区間新記録をマークした東海大・館澤亨次 館澤はその姿を、目に焼きつけたという。

「自分は夏からケガをして、主将として何もできなかった。その間、西川が全部支えてくれていたんです。そんな西川が涙を流しているのを見て、悔しいなって思ったんです。ここまで自分の代わりにいろいろやってくれた西川を、そんな思いで終わらせるわけにはいかない。笑って終わってほしかった」

 館澤のモチベーションは最高潮に達していた。4年生として、主将として臨む最後の箱根駅伝。復路にも強い選手を残している青学大を逆転するには非常に厳しいタイム差だったが、館澤は「みんなも自分も(逆転優勝は)いけると思っていた。誰ひとりとしてあきらめていなかった」と言った。

館澤は「自分の走りで流れをつくろう」と決意し、ここまで支えてくれた西川への恩返しの気持ちを込めて、6区のスタートラインに立った。

 館澤は5秒前にスタートした3位の東京国際大にすぐに追いつくなど、上々のスタートを切った。

「自分は下りでは戦えないと思っていたので、最初の上りとラスト3.8キロの平地に入ってからが勝負だと考えていました」

 下りは平凡でも、その前後で差を詰めていく——山下りに館澤を起用した両角監督は「6区の新しいモデルケースになる」と思ったという。