東海大の黄金世代に「勝ち意識」の呪縛。出雲駅伝で4位も収穫はあった (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nikkan sports/AFLO

「前を走るのは優勝候補と言われる大学ばかりで、自分のすぐ前には学生で一番強い相澤さんがいた。ここで自分が引いてしまったら、差は開く一方になるので、なんとか相澤さんについていって、粘れるところまで粘ろうと思っていました」

 今シーズン、塩澤は故障がなく、好調を維持してきた。大会10日前のポイント練習でも西田とともに先頭を走っており、「調子いいですよ」と出雲を楽しみにしていた。その言葉どおり、相澤の背後にピタリとつき、前をいく駒澤大、青学大、国学院大を追った。

 だが6キロ過ぎ、相澤との差が開き始めた。

「アップダウンの箇所が2つあって、2つ目の上りまではついていけたんですけど、下りでペースを上げられてしまって......。自分とは違う、強い人の走りだなって思いましたし、力の差を見せつけられました」

 それでも塩澤はそれまでの区間記録を更新する走り(2409秒)で、レースを終わらせなかった。先頭集団に大きく離されることなく、残りの3区間に勝負をつなげた。そういう意味で、塩澤の走りはタイム以上に大きかった。

「少しでもうしろにいい形でつなげることができたかなと。次(11月3日の全日本大学駅伝)もおそらく走る距離は変わらないと思うし、今は力がついてきている。次こそ優勝につながる走りをしたいなって思います」

 その塩澤から襷(たすき)を受けた4区の市村は、とても初駅伝とは思えない落ち着いた走りを見せた。市村の付き添いをしていた小松陽平(4年)は「緊張とかはまったくなかったですね。自信を持ってスタートに立てていたと思います」と語っていたが、そのとおり、スタートから冷静に前を追っていった。

「最初早いペースで入って、そこから落ち着いて走ろうかなと考えていました。自分のペースをしっかり守るというより、前と離れていたので......自分のペースを守りつつも前を追っていくという、なにかもどかしい感じでしたが......

 これまで市村はトラックではいい走りを見せていたが、ロードでの経験がほとんどない。それゆえ、ロードの走り、さらに単独走に対応できるのだろうかという不安があったが、杞憂に終わった。

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