三大駅伝で優勝を狙う東洋大。酒井監督の「強制なし」マネジメント術 (3ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • photo by Nikkan Sports/AFLO

―― 一方でチームとしては、相澤選手がそういった多くの大会に出場している間は他の4年生がカバーしたりと、組織力が高まっている印象を受けます。

「やはり相澤に走りで依存、チームづくりでも依存では、エースに負担ばかりかけてしまう。そういう意味でも、彼が不在の間は副主将の今西駿介(4年)を中心にみんなをまとめてくれたので、チームにとっていい経験ができた期間になったと思います」

――酒井監督ご自身は、チームマネジメントという観点で何か実践されていることはありますか?

「私は監督に就任して11年目になりますが、毎年、あえて夏合宿を開催する場所を変えたり、練習メニューも固定化せず、選手たちに自分に合った練習場所・メニューを考えさせたりするようにしています。最終的には『一人ひとりが自立自走できるチーム』にしていきたいからです。

 もちろん東洋大らしい走りができるよう逆算してメニューを作ることも正しいですし、そこが辿り着くべき目標ではあります。ですが、やはり『優勝した時はこういう練習をしていたからこのメニューをやりなさい』と強制するのではなく、自分たちで自らの走り、状態を常に把握して構成を考えてほしいのです。

 これは大学で結果を残すことだけではなく、卒業後に実業団チームに入って以降のことを考えてのやり方でもあります。実業団選手になれば、多くのことを自分で決めなくてはいけませんから、大学の頃から己を知り、プランニングを考え、実践できる選手になる必要があるのです。実業団に入ってから『はい、スタート』では遅い。自立した人間でないと、強い選手にはなれませんから」

――では、今年の夏合宿を9年ぶりに福島県・猪苗代町に設定したのも、選手たちの意見を考慮したうえで決定されたのですか?

「それもあります。選手によってはクロスカントリー派や、ロードで練習したいという選手もいました。加えて、足の状態がよくない選手、競歩の選手がいることも考慮して、最終的に猪苗代町に決めたんです。クロカン向けの起伏あるコースもあれば、競歩選手用に平坦なコースもありますし、柔らかい芝もあるので。また、クロカンのコースが充実している山形・上山市蔵王への交通アクセスもよかったのも合宿の拠点に決めた理由のひとつです」

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