桐生祥秀が10秒0台を連発。ライバル不在で取り組んだメンタル強化 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 それは桐生も同じだ。昨年はなかなか出せなかった10秒0台を今年は初戦から4試合で4回出せていることに、「手応えは感じていますが、もう一段階はまだ上がってないなと感じます。僕は0台を連発することを狙っているわけじゃないし、自己ベストを出したいけど、その自己ベストに届いていないので、まだまだ自分の成長のために練習をしなければいけないなと思います」

 ただ、今回は予選と決勝の約2時間で、まったく違った走りをしながらも10秒0台前半のタイムでまとめられたことには意味がある。世界大会での予選、準決勝、決勝と進むラウンドでの戦い方も意識することができた。

 桐生も「狙っていた9秒台を出せなかったのは、まだまだトップに追いついていない部分があるということ。世界大会でも予選だったら今日のような感じでいけばいいと思うし、準決勝に進んだらゴールデングランプリやアジア選手権のような(強い相手と戦うという)モチベーションでいけばいいと思うので。それを学べたと思います」と笑顔を見せる。

「自分の中では、9秒台を出さなければ観客の人たちも喜んでくれないという思いもあるので......」と苦笑する桐生だが、その表情は10秒01を出した高校3年生以降、9秒台への期待を背負って苦しんでいた頃とは明らかに違う。

 この大会の10秒0台連発は、彼にとって次に進むためのステップになったはずだ。

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