東海大、箱根初制覇の一因。
阪口が生み小松が喜んだ「最高の4秒差」 (2ページ目)
タイム差を把握し、相手の背中が見えると普通は一気に抜きにかかるところだ。当然、阪口もそのつもりで必死に追った。阪口が振り返る。
「残り200mで一気に抜こうと思ったんですよ。でも、近づいて抜こうとすると小笹さんがスピードをあげるんです。そういうのもあって、なかなか追いつけなくて......。これが4年生の意地なのかなと思いましたけど、自分もきつかった。最後は、そこで抜くよりも、どのくらいの差で小松に(襷を)渡せるかを考えて走りました」
小松に10秒以上の差で渡すと、追いつくまでに突っ込んでいかなければならない。だが、5秒差以内だとそれほど無理することなく、相手に並ぶことができる。阪口は言う。
「小松もちょっと負けているぐらいでちょうどいいと言っていたし、その後のレース展開を考えると相手のうしろについて走る方が効率いいので、そのまますんなりうしろにつけるタイム差でいければと思っていました」
襷を待つ小松は、15秒差ぐらいまでは離れても問題ないと思っていた。
「今の自分の調子のよさを考えると、そのくらいの差であれば必ず追いつけると思っていました。実際、どのくらいの差で来るのかなぁ......と思っていたら4秒差という、もう最高に絶妙なタイム差だった。阪口、サイコーだよって思いました」
この4秒差は、小松をリラックスさせた。初めての箱根駅伝だけに多少の緊張はあったが、自分が勝負できるタイムで襷を受けると、肩の力が抜け、闘志が沸いた。
小松は走り始めてすぐ、ほとんど力を使うことなく東洋大の鈴木宗孝(1年)に追いついた。だが、小松はすぐに追い抜こうとしなかった。
「両角監督から『しばらくは相手のうしろについていけ』と指示が出ていたので......」
その言葉どおり、小松は鈴木の背後にピタリとつき、鈴木を風よけにしつつ、じわじわとプレッシャーをかけ始めた。
鈴木との1万mのタイム差は43秒程度あり、数字だけをみれば圧倒的に小松が優位だった。実力的にも、勢いからしても、すぐに前に出ていけそうな気配を醸(かも)し出していたが、なぜ両角監督は一気に抜き去らず、ピタリと鈴木をマークさせたのだろうか。
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