女子短距離界に新星現わる。期待の高校生「変化」に気づき、急成長 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 また、中村監督が指示する練習も、「これはレースの中のこの部分につながるんだな」と、意図を考えてやっているうちに身につき、実際のレースでは無意識にできるようになっていた。そんな風に自分でしっかりと考える練習が、6月の北海道高校選手権の自己記録更新につながったのだ。

「高校2年ですごい選手たちと組んでアジア大会でリレーを走れるというのは、これから陸上を続けていく上でも他の人にはできない経験だと思うので、それを絶対に生かして次につなげていきたいです。そのためにも8月のインターハイでは、アジア大会へ向けて自信になるようなタイムを出して優勝するという目標を達成したいですね」

 夏のインターハイで目標にするのは、昨年の日本ランキング3~4位に相当する11秒5台前半だろう。しかし、世界のレベルで戦うためにはそこで止まっている訳にはいかない。

 今はうまく噛み合わず、もどかしい走りをしているエースの福島だが、彼女の心の中には「リレーで世界と勝負するためには、自分のベスト記録の11秒21に迫るような選手が複数出なければいけない」という思いがある。自分に対するもどかしさとともに、近年はかつてよりレベルが落ちている女子短距離の現状にも不満を感じている。

 そんな状況を誰がどう変えていけるか。「焦らずにゆっくりと、ちょっとずつ技術も学びながら強くなっていきたい」という御家瀬もその候補として、名乗りを挙げなくてはいけない。アジア大会のリレーで、自分より遥かにレベルが高い選手たちのトップスピードを肌で感じることは、彼女にとって、いい機会になるはずだ。

◆200mで日本一の飯塚翔太が明かす「やっぱり100mも走りたい」

◆100m王者は山縣亮太。9秒台連発の中国勢にアジア大会で勝てるか

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る