神野大地が泣き崩れるに至った、東京マラソンのレース状況を密着ルポ (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 レースがスタートすると、外国人選手たちがトップ集団を作り、井上、設楽らがその中に加わった。

 そのトップ集団が最初の5kmを14分45秒でいくと、神野は14分54秒で続く。10kmも先頭は29分37秒で、神野は29分52秒だった。1km3分ペースを守り、楽に走れているように見えた。

 中間地点は設楽がトップで通過して1時間02分43秒。一方の神野は1時間3分35秒と、まずまず予定通りのペースで走っていた。30kmのタイムは1時間30分35秒、神野は鈴木健吾、木滑良、山本憲二、佐藤悠基、宮脇千博とともに第2集団の中にいた。

「30kmまでは足も体もどこもきつくない感じで、3分ペースも全然速くないなって思っていたんです。そこまではほぼ完璧でした。ただ勝負は35kmからだなって思っていたので、そこまではいきたい気持ちを抑えてタメていこうと考えていました」

 福岡のレースでは"蹴り上げ"を意識していたが、足が流れてしまっていた。足が流れて体の重心より後ろで着地をすると、うまく地面に力を伝えることができない。そのため、思っているより前に進まないうえ、疲れが溜まりやすいのだ。

 それを修正するために、中野からレッグカールという「適度な股関節の伸展と素早い膝関節の屈曲」を狙ったトレーニングと、早く足をたたんで走るという課題を与えられた。ニュージーランド合宿ではそれを意識して走り、帰国後、中野にチェックしてもらうと、ほぼ完璧にできるようになっていた。

 もちろん東京でもそれを意識して走り、すべてがうまくハマって2時間8分台が見えていた。

 だが、32キロkm付近で、神野の身体に突然、異変が起きたのである。

(つづく)

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