神野大地が泣き崩れるに至った、
東京マラソンのレース状況を密着ルポ

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

神野プロジェクト Road to 2020(14)
東京マラソン・前編

(前回の記事はこちら>>)

トレーニング後のアイシングをしながら、東京マラソンを振り返る神野トレーニング後のアイシングをしながら、東京マラソンを振り返る神野 神野大地は泣いていた。

 東京マラソンを走り終えた神野が中野ジェームズ修一と言葉を交わすと、みるみるうちに表情が歪み、堰(せき)を切ったように涙がこぼれ落ちた。嗚咽(おえつ)をこらえ、そのままミックスゾーンを通りすぎてエレベーターで選手控室に戻った。 

 部屋でクールダウンをし、気持ちを落ち着かせると神野は大勢の報道陣が待ち受けるフロアに出てきた。そしてレース展開について話をした後に、涙の理由を問われてこう答えた。

「ゴールした時、出し切った感もないですし、悔しいなって思ったんです。その後、中野さんに『1歩ずつ進んでいるから大丈夫だよ』って言われたんですが、そうしたら自然と涙が出てきて......。中野さんと一緒にトレーニングをやってきて、結果で恩返しをしたいという思いがあったんですけど、その期待に応えられなくて......」

 神野の瞳から再び涙があふれ出る。

「本当に自分のために時間を費やしてくれて、トレーニングのメニューとかも考えてくれていたんで、中野さんと一緒に喜びたかったんですが、それができないのが一番悔しいです」

 そのまま肩を揺らして泣く神野の姿に報道陣も言葉を失い、沈黙が続く。

――でも、手応えは掴めたんですよね。

「福岡(国際マラソン)から数カ月ですけど、レベルアップはできましたし、僕のマラソン人生はまだまだこれからだと思うので、また頑張っていきたいと思います」

 神野は少しだけいつもの自分を取り戻し、そう言葉を絞り出した。

 2018年2月24日に開催された東京マラソンには、昨年の覇者であるウィルソン・キプサング(ケニア)ら世界のトップランナーたちをはじめ、日本からは設楽悠太、井上大仁、鈴木健吾なども参加。実力ある実業団や学生ランナーたちが、日本記録更新やMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権獲得を狙っていた。

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