神野大地が泣き崩れるに至った、東京マラソンのレース状況を密着ルポ (3ページ目)
それを確かめるため、神野は帰国後に丸亀ハーフに出場した。設定タイムは、1km3分ペースで1時間3分前後を予定していた。
「あまりコンディションはよくなかったんですけど、だいたい60%ぐらいの力で1時間2分35秒というタイムが出たんです。これなら、30kmまでは1km3分ペースで絶対に余裕を持っていけると、自信を深めることができました」
さらに、マラソン当日までのコンディション作りのアプローチも見直した。
「福岡の時は、レイヤートレーニングを10日前にやって、けっこう筋肉に張りを残した状態で臨んだんです。東京を同じ状態で走っても意味がないですし、どういう状態が自分にとって一番いいのかを確かめるために、今回は早い段階で疲れを抜いていくことにしました。レイヤーも3週間前に終えて、走る量も1週間前から落とした。試合2日前、前日には1万mのレースに出るような体が軽い状態に仕上がりました」
レース前日、中野が神野の足を触診すると、張り感はなく、押した時に跳ね返ってくるような弾力性があった。押した時にそのまま沈むと"抜けすぎ"だが、うまく疲れを抜いて筋肉が最もいい状態になっていた。
そうして東京マラソンのスタートラインに立った神野は、程よい緊張感の中にいた。
福岡では過度の緊張でフォームがバラバラになってしまったが、その心配はなかった。「給水をちゃんと取れるだろうか」「1km3分でいけるだろうか」という不安もなく、レース運びについては何回も福岡の映像を見直したという。
「自分はペースメーカーの真裏ではなく、ちょっと離れてみんなの様子が見えるぐらいの位置にいて、集団から出たり入ったりしないように心がけました」
東京マラソンではペースメーカーが3パターン用意されていて、1つ目が1kmを2分54秒、2つ目が2分58秒、3つ目が3分である。1kmを3分で押していくと2時間6分台の記録を出すことが可能になる。神野は無理せずにそのペースでいくことに決めていた。
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