神野大地、苦しみの初マラソンにも「大迫さんを越えていかなければ」 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 春から取り組んできた自分のフォームで走り切ることができなかった。目標タイムには届かず、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の権利を獲得することもできなかった。

 しかし、すべてがムダになったわけではない。初マラソンで2時間12分50秒のタイムは次につながる成果になった。

「僕はこの大会で高い目標(2時間8分59秒)を立てていた分、いろいろ言われるのはしょうがない。でも、途中でタレて2時間12分台で帰ってこられたということは、少なくとも自分はマラソンに向いてないことはないなということ。

 中野さんからも『箸にも棒にも引っかからない選手であれば2時間20分以上かかるけど、悪くても12分台で帰ってこられたのは、これから選考争いに加われるということ』と言っていただいた。2時間7分台を狙うには、3分ペースでもうちょい余裕が必要だなって思いますが、9分台を狙うなら今の練習を継続して狙えると思います。でも、もうそれじゃ勝てない。もっとやらないといけないですね」

 神野を奮い立たせているのは、大迫傑(すぐる)の走りだ。

 大迫は一度も先頭集団から離れることなく、ロンドン五輪金メダリストのスティーブン・キプロティク(ウガンダ)と2位争いを演じ、日本人トップ、総合3位に入り、2時間7分19秒の記録を出した。

「大迫さんはレース中、終始冷静でした。集団の中でも勝つことしか考えていなかったらしいですし、タイムもラストトラック1周になってから意識したと言っていました。自分の考えというかやり方を貫いていましたよね。僕はレース中、まだ大迫さんがいるとか、5km何分、10km何分ってタイムを気にしていた。周囲が気になって、自分の走りに集中できていなかった。その時点で僕は大迫さんに負けているなって思いました」

 隣で一緒に走ったからこそ、大迫の強さを肌身で感じられた。

 その大迫と神野の間には5分もの差がある。この差を神野はこれから縮め、さらに追い抜いていかなくてはならない。

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